フィギュアスケート界で長く愛され続ける三原舞依選手。その柔らかな笑顔の奥には、競技者としてだけでなく、一人の人間として“誰かの力になりたい”という静かな意志がある。彼女が長年続けているヘアドネーションは、華やかなリンクとは対照的に、ひっそりと、しかし確かな優しい想いが込められている。
小さな力でも届けたい。35cmに託した三原選手の想い
今年5月、ヘアドネーションのためロングヘアからボブヘアにフィギュアスケーター・三原舞依選手が、競技生活と並行して長年続けている活動がある。それが、医療用ウィッグの原料となる髪を寄付する“ヘアドネーション”だ。彼女が初めてこの活動を知ったのは、小学生の頃。実家が美容院で、ドネーション用に髪を切りに来たお客さんを見たときだったという。
「“こんな素敵な活動があるんだ”って衝撃でした。小さい力でも誰かの役に立てるならいつかやってみたい、とその頃からずっと思っていました」
幼い頃から母にさまざまなヘアアレンジをしてもらい、髪の扱いやケアの大切さを自然と学んできた三原さん。髪の毛には“誰かを笑顔にできる力がある”と感じていた。
初めてドネーションに挑戦したのは2018年。医療用ウィッグは一般的に31cm以上の長さが必要とされるが、せっかく寄付するなら、使う方がより自然に見えるようにという思いから、彼女は35cm以上を目標に伸ばすことを決めた。以来、「髪にハサミを入れるとき=ドネーションのとき」というサイクルができ、今年の夏で5回目の寄付を達成した。
「ボブで練習していると、チームの方が“ドネーションしたんだね”って声をかけてくれたり、“新鮮!”って言ってもらえたり。そんな反応も嬉しいです」
現在の髪もすでに結べるほどに伸び、6回目に向けて丁寧にケアを続けている。フィギュアスケーターとして髪を伸ばすことは、競技の負担にならないのだろうか。
「私、髪が伸びるのが早くて、1年半〜2年で目標の長さになります。長くなると乾かすのが大変なときもありますが、少しでも良い状態で届けたいという気持ちがとても強いですね。最近は無意識のうちにポーチからコームを出して髪を梳いているくらい、ケアが習慣になっています」と笑う。
誰かの笑顔の源になりたい
良い状態の髪を寄付するため、カラーやパーマなど髪に負担のかかることは避けているそう日本では毎年約2500人の子どもが小児がんと診断され、事故や脱毛症を含め、医療用ウィッグを必要とする子どもは決して少なくない。さらに、ウィッグ1つを作るには30〜50人分の髪の毛が必要だと言われている。
「私1人だけではウィッグを作れません。でも、ヘアドネーションが広がれば、待っている方々へ届けられる数も増えるはず。その思いもありSNS(※所属チーム公式インスタグラム)でも発信を続けています」
その発信をきっかけに、ファンや友人から「私も寄付しました」と知らせが届くこともあるという。
「私自身、つらい時や悩んでいる時に、応援してくださる皆さんからの言葉に本当に救われてきました。恩返しというわけではないけれど、私なりの形で感謝を伝えたい。誰かの笑顔や元気につながるなら嬉しいですし、これからもできる限り続けたいと思っています」
