医師が語る、定期接種の認知低下と今あらためて考えたいこと

佐藤昭裕先生
KARADA内科クリニック五反田院院長
日本感染症学会専門医。総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医と してHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワ クチン診療などに従事。東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城 医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。
今回の調査結果についてコメントを寄せたのは、KARADA内科クリニック五反田院 院長の佐藤昭裕先生です。
佐藤先生は、日本感染症学会専門医として、感染症診療に長く携わってきた医師です。HIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、院内感染対策やワクチン診療にも従事しており、現在も現場で診療を続けています。
佐藤先生によると、冬の流行期に入るにつれて、新型コロナウイルス感染症の患者は再び増加傾向にあるといいます。一方で、昨年ほどの危機感を持っていない人が多いことも実感しているそうです。その背景には、テレビなどで新型コロナに関する情報が以前ほど報じられなくなったことが影響している可能性があると指摘しています。
今回の調査で、定期接種の対象者であることの認知率が3割を下回っている点についても、佐藤先生は強い問題意識を示しています。情報が十分に届かないことで、「自分が対象であることを知らないまま接種の機会を逃してしまう人がいる」と考えられるからです。
また、自治体ごとの対応にも触れ、対象者に対して積極的に情報を届けている自治体では認知率が高くなる傾向がある一方、特に周知を行っていない自治体では、定期接種の情報が伝わりにくくなっている現状があるとしています。制度があっても、伝え方次第で受け取られ方が大きく変わる点は見逃せません。
さらに佐藤先生は、定期接種の認知率低下が、接種率そのものの低下につながる可能性にも言及しています。新型コロナによって入院する重症患者のほとんどがワクチン未接種者であるという研究データも報告されており、入院や重症化を防ぐ観点からも、接種の意義は大きいと述べています。
後遺症についても、新型コロナに罹患した10人に1人は後遺症が出るといわれていますが、ワクチンは後遺症の発現を低減することができるという研究データがあることに触れ、高齢者に限らず、後遺症を抑えるための選択肢として接種を考えることは意味があるとしています。
そして、早期診断、早期治療を心がけ、流行に備えて医師に相談することもポイントです。
制度を知ったうえで、自分なりの判断をするために
新型コロナワクチンの定期接種は、すでに制度として整えられている一方で、その内容や対象について十分に知られていない現状が見えてきました。
認知率の低下や、自治体ごとに大きく異なる自己負担額は、「制度があること」と「生活者に届いていること」が必ずしも一致していないことを示しています。
今回の調査データを通して印象的だったのは、情報不足によって判断の機会そのものが失われている可能性がある点です。受けるかどうかを決める前に、「自分が対象なのか」「どのくらいの負担が必要なのか」といった基本的な情報を知ることが、まずは重要だと感じました。
また、医師のコメントからは、ワクチン接種を一律に捉えるのではなく、年齢や体調、生活環境などを踏まえて考える姿勢の大切さも伝わってきます。制度や数字を知ったうえで、必要に応じて医療の専門家に相談することが、納得感のある選択につながるのではないでしょうか。
情報があふれる時代だからこそ、知らないまま過ぎてしまうのではなく、一度立ち止まって整理してみること。
今回の調査結果は、そのきっかけとして捉えることができそうです。
