
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
【画像】え…っ! 「出会ったときは18歳」「もう子供いた」 コチラがラフカディオ・ハーンの最初の美人妻の実際の写真です
乳母も重要人物
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『骨董』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支えた妻・小泉セツさんがモデルの物語です。
第12週57話では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」の未来の夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」が、大雄寺の住職(演:伊武雅刀)から「水あめを買う女」という話を聞き、「怪談」の魅力に取りつかれます。そして、大の怪談好きであるトキも、ヘブンに怪談を語り始めました。
トキのモデルであるセツさんは、夫のハーンさんに彼の「再話文学」の元ネタとなる、さまざまな怪談を語ったことで知られています。また、ハーンさんの人生にはほかにも、怪談や不思議な物語を語ってくれた重要人物がいました。
ギリシャのレフカダ島出身のハーンさんは、2歳で父・チャールズさんの故郷、アイルランドに移住します。しかし、母のローザさんはアイルランドの生活が肌に合わず精神を病み、ハーンさんが4歳のときにギリシャに帰ってしまいました。当時、イギリス軍医だったチャールズさんはクリミア戦争に出征しており、ハーンさんは父方の大叔母であるサラ・ブレナンさんに引き取られ、孤独な幼少時代を過ごします(両親は7歳のときに離婚)。
広大なサラさんの屋敷で、幼いハーンさんはアイルランド島北西部のコナハト出身の乳母、キャサリン・コステロさんから、アイルランドの怪談や妖精譚を聞いて育ちました。ハーンさんはこの乳母から、万物に精霊が存在するという、ケルトの民俗宗教ドルイドの考えも教わったそうです。また、彼は大叔母の屋敷で恐ろしい幽霊や精霊(の幻覚?)を目撃したと言われています。
そして、青年時代のハーンさんにさまざまな「幽霊譚」を語ってくれたのが、アメリカのオハイオ州シンシナティで1874年から77年まで結婚していた、アリシア・フォリー(愛称:マティ)さんでした。『ばけばけ』のヘブンの過去編に登場した、「マーサ(演:ミーシャ・ブルックス)」のモデルです。
黒人奴隷の母と白人農園主の父を持つマティさんは、ハーンさんの下宿先の料理人として知り合いました。ハーンさんはマティさんの気立ての良さや美しい容姿以外に、彼女の語り部としての能力にも惹かれたといいます。
マティさんはハーンさんに、自分がかつて見たという幽霊や、黒人奴隷たちの怨霊の話を臨場感たっぷりに話してくれたそうで、ハーンさんは1875年9月26日のシンシナティ・コマーシャル紙の記事で、実名は伏せつつも彼女に関して「読み書きを習ったことは一度もなかったが、語るに際しての素晴しく豊かな描写力、普通以上に優れた記憶力、そして、イタリアの即興詩人をも魅了するであろう座談の才などに生来恵まれていた」と、最大級の賛辞を送っていました。
ただ、『ばけばけ』で描かれた通り、ハーンさんは異人種間を禁じる法律を破ってマティさんと結婚したせいで新聞社を解雇され、結婚生活は3年ほどで破綻してしまいます。そして、十数年後に日本で同じく優秀な語り手だったセツさんと出会い、ふたりでさまざまな名作文学を生み出しました。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『小泉八雲 漂泊の作家 ラフカディオ・ハーンの生涯』(毎日新聞出版)、『セツと八雲』(朝日新聞出版)
