最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
2連覇王者に衝撃の「46-0」快勝劇――埼玉WK、稲垣啓太が体現した“何となく”を捨てた逆算思考のディフェンス【ラグビー・リーグワン開幕】

2連覇王者に衝撃の「46-0」快勝劇――埼玉WK、稲垣啓太が体現した“何となく”を捨てた逆算思考のディフェンス【ラグビー・リーグワン開幕】

強みを見つめ直す。

 埼玉パナソニックワイルドナイツは12月14日、国内リーグワン1部の開幕節で2連覇中の東芝ブレイブルーパス東京に46―0で完封勝ち。東京・味の素スタジアムのフィールドに堅陣を敷き、突破の糸口さえも滅多に与えなかった。

 パスの飛ぶ先へタックラーの束が跳び掛かり、大外の穴場を突かれたとしても巧妙かつ勤勉なカバーで事なきを得る。
  もう勝負がつきそうだった後半19分頃には、自陣ゴール前で一枚岩となった。

 渋く光ったひとりは稲垣啓太。約3分前に投じられた35歳は、仲間と協働する形で2度、強烈に打ち込む。球出しのテンポを鈍らせる。まもなく攻守逆転した。

「相手がこちらの予想してきたアタックをしてきたので、我々としてはいいイメージでディフェンスできた。つまり、準備ができたという思いです」

 当の稲垣はこうだ。日本代表53キャップの理論派は、「チーム全体のことは言わないようにします」と戦術の詳細には触れない。ただ、ブレイブルーパスのおもな攻め方を自軍の守り方で抑える「準備」ができていたのは確かなようだ。

 身長186センチ・体重116キロ。スクラム最前列の左プロップにあって、タックルや突進のインパクト、運動量で際立つ。特にいまは、「タックルの精度より、威力(を意識する)」。衝突局面よりも前でプレーできない競技の原則を踏まえ、「威力」を求める考えを言語化する。

「1回、『受け』てしまうと、どんどん整備の(周りの選手が防御ラインを整える)時間が減って、アタックも早くなって、それが繰り返されると(元の位置に)戻って来られないんですよ。そうさせないために、強い、相手を押し返すタックルが必要。それをやるには速くポジションにつかないといけない…。速く動かないといけない…。どのポジショニングで、どの角度で立つべきか…。どの身体の向きで、どのくらいまで上がる(間合いを詰める)べきか…。と、どんどん逆算(必要項目)が生まれてくる。それを一つひとつ、順序立てて考えていく」
  気を引き締める伏線があった。11月22日のことだ。地元グラウンドでのプレシーズンマッチで、2部の豊田自動織機シャトルズに26―33と屈した。

 過去5度の日本一を達成も、前年度はリーグワンができてから初めてプレーオフの決勝行きを逃している。捲土重来を期していた今年の準備期間に、思わぬ敗戦を喫したわけだ。
  ただ負けただけではなく、本質的な問題点を見出したのがよかった。低い姿勢で当たったほうが前に出やすいという原理に基づき、稲垣は続けた。

「その試合のレビューで、『ボールキャリー(突進役の姿勢)が高かった』という意見が出た。ボールキャリーが高い(のが悪い)なんて、学生の頃から何十回、何百回、何万回と言われているんです。『わかっているのにやらなかったのは自分でしょ。その選択をできないんならグラウンドへ出るな』と。これは僕が言うまでもないですけど、(複数名が)言葉にして、皆に発信していきました」

 約1週間後、同じエリアの会場で、長年頂点を争う東京サントリーサンゴリアスを破った。27―17。その後、宮崎合宿での再点検を経て、今度のオープニングゲームに至っていた。基本項目を軽んじないのがいまの姿だ。

「やるか、やらないかって、自分で選択するしかない。『何とかなるだろう』と言って、何とかなる時もありますよ。でも、それでどうにもならない時、『何とかなるだろう』で入っていたら立て直せないですよ。『何となく』こなすことは皆、できる。ただ、本当の真剣勝負になった時、『何となく』で入ったらやられる。僕がメンタルのことを言っているのは、ただ感情論を強調したいからじゃない」

 24年以降は国際舞台から離れている。適宜、コンディションを整えていたためだ。これから約半年のシーズンを通し、「頑張って(代表復帰を)目指しているところです」。高質な動きと心構えをアピールし、27年のオーストラリアで4度目のワールドカップ出場を狙う。

取材・文●向風見也(ラグビーライター)

【動画】リーグワン開幕節で前回王者がまさかの大敗…埼玉WKが完勝
【画像】世界の強豪国と激突する「エディーJAPAN」の注目メンバー5選!

【動画】欧州遠征のクライマックス、ジョージア戦ハイライト
配信元: THE DIGEST

あなたにおすすめ