フェラーリのトラックエンジニアリング責任者であるマッテオ・トニナッリによれば、ルイス・ハミルトンとフェラーリの関係は、外部から見えるほど緊張したものではないという。一方で、チームとしても双方にとって必要となる適応期間を「過小評価していた」ことは認めている。
2025年にフェラーリへ加入したハミルトン。しかしこの1年目の戦いは、新しいレースエンジニアであるリカルド・アダミとの無線交信が時折素っ気なく聞こえることがあり、何かと噛み合っていない印象を与えた。
ハミルトンは何の問題もないと説明し、レッドブルのマックス・フェルスタッペンもエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼに対して同様に率直なやり取りをしていると指摘して反論しているが、良いリザルトを残せていない中で、こうした要素に注目が集まることは避けられなかった。
しかしこの件は外部から見た時と、内部から実際に接している人では、かなり評価が異なっているという。トラックエンジニアリング責任者を務めるトニナッリが語った。
「ドライバーを変更したりチームを移籍することは、ドライバー側にとってもチーム側にとっても非常に難しいことだ。とりわけルイスのように10年間同じチームで過ごし、非常に豊富な経験を持つドライバーの場合はね」
トニナッリはそう語る。
「各チームは微妙に異なるやり方で運営されており、特定の人や物事が中心的な役割となることが多い。そして、ルイスが世界選手権を勝ってきたという実績があり、今年のフェラーリがタイトルを争うという目標を達成できなかったという現実が重なり、フラストレーションが今のような状況を生み出している」
「外部が考えているモノについては、実際よりもかなり悪く映っていると思う。ルイスとの関係は極めてポジティブだ。彼は10年間、同じチームで同じ人たちと仕事をしてきたが、この10ヵ月間でもう非常に強い結びつきを築けていると感じている」
「それでも、フラストレーションや結果が、フェラーリにおける我々自身や彼のイメージを作り上げてしまい、それによって実際よりもはるかに悪く見えているのだと思う」
「なぜ苦しんでいるのか? 繰り返しになるが、その一部にフラストレーションはあると思うが、先程も話したが互いに適応するための時間が必要だという点もあったと思う。そしてチームとルイスの双方が、当初はそれを過小評価していたのかもしれない。しかし私は自信を持っている。我々の関係は外部が考えているほど悪いとは思っていないし、時間とともに必ず改善していくと確信している」
なおフェラーリは2025年シーズンを未勝利で終えてしまったが、問題の大半は予選におけるタイヤの扱いに苦しんでいることだと、トニナッリは説明する。
「今年は仕事の90%が予選で決まる。前からスタートすれば前でフィニッシュできる」とトニナッリは語り、全24戦中16戦がポールポジションからの勝利だったことを指摘した。
「後方からスタートすれば、よほど何か違うことをしない限り、あるいは最後尾からでない限り、オーバーテイクは極めて難しい。ポイントはまず、今年のタイヤが1周の中で非常にセンシティブだということだ。ブラジルでのフェルスタッペンを見れば分かるだろう。スプリント予選では前にいたのに、その後は16番手だった」
「予選でのタイヤ準備だけで、コンマ2~3秒は簡単に動いてしまう。そこに我々は集中してきたし、改善できた部分だと思っている。あとは多くの状況による要素がある」
「ラスベガスの場合なら、ルイスはボラードに当たったことが予選を台無しにした。そう考えると、かなり状況的な要素もある。シャルル(ルクレール)についてはQ3で最後のラップを取れなかった。もっと良い結果を出せたはずだ。もしQ3の予選を2分前で止めていれば、3番手だった」
「鍵となる要因はタイヤだと思う。これは誰もが苦しんでいる点だ。見てのとおり、非常にばらつきが大きい。我々は全員がコンマ2秒以内に収まっている。つまり、わずかな差が大きな違いを生む。予選によっては、10台がコンマ1秒以内に入ることもあるんだ」

