
19試合でまさかの無得点。なぜ古橋亨梧はゴールから遠ざかる? 動き自体は錆びついていない。むしろ気になるのは...【現地発】
FW古橋亨梧が苦戦している。
イングランド2部バーミンガム・シティに移籍したのは今年7月。移籍金は非公表だが、地元メディアによると900万ユーロ程度(約16億円)と見られている。
なおこの金額は、イングランド3部から2部に昇格した同クラブにおいて、今夏の移籍市場で最高額だ。2位のテイラー・ガードナー=ヒックマンが移籍金240万ユーロ(約4億円)とされていることからも、古橋が「今夏市場の目玉」だったことが分かる。
しかし、である。チャンピオンシップ21節終了時で、古橋のリーグ得点数はゼロ。リーグカップで1ゴールを挙げているものの、優先順位の高いリーグ戦ではいまだにネットを揺らしていない。
また、リーグ出場数は19試合にのぼるが、先発出場はわずか5試合。期待を大きく下回る数字と言わざるを得ない。移籍金が高額だった分、地元メディアのバーミンガム・ライブが「大金を投じた判断は間違いだったのか?」と伝えているように、失望の色は大きいようだ。
もちろん、古橋は輝かしい実績を誇る。21年夏の移籍市場で、アンジェ・ポステコグルー監督のラブコールを受け、セルティックに移籍。1年目でリーグ戦では12ゴールを挙げ、スコティッシュ・プレミアリーグ優勝に貢献した。
そして在籍2年目にはリーグ戦で27ゴールと大爆発。このシーズンは、得点王とリーグ年間最優秀選手賞、PFA年間最優秀選手賞(※選手投票)、記者協会・年間最優秀選手賞と、個人賞を総ナメにした。セルティックに古橋亨梧あり──。そう言われるにふさわしい、強烈なインパクトを残した。
ところが、監督がポステコグルーからブレンダン・ロジャーズに替わると、古橋の序列は徐々に低下していく。25年1月にはフランスのスタッド・レンヌへシーズン途中で移籍したが、ひとつのゴールも挙げられなかった。
迎えた今夏の移籍市場で、古橋の獲得に名乗りを挙げたのがバーミンガムだった。指揮官のクリス・デイビスはこう語っていた。
「1年前なら、この補強は実現しなかった。キョウゴはセルティックのストライカーだったからだ。フランスでの生活に馴染んでいないと聞き、獲得のチャンスがあると思った。キョウゴは、我々のプレースタイルに合っている。プレスを積極的にかけるし、スピードもある」
当の古橋も、バーミンガム加入時に「チームの力になりたい。プレミアリーグに昇格できるチャンスはあると思う」と語り、1部昇格を目標に掲げていた。
だが、シーズンの折り返し地点に入ろうとしている現在も、結果はついてきていない。チームは13位。地元紙バーミンガム・メールは「古橋がチャンスを逃すたびに、サポーターは失望の声を上げている」と報じ、ここまで期待外れに終わっていると指摘した。
筆者が取材したQPR対バーミンガム戦で、その古橋が後半開始時から出場した。ポジションは4-2-3-1のCF。ピッチに入ると、古橋は随所に「らしさ」を見せた。
自軍のボール保持になれば、古橋は相手ディフェンスラインの周辺に陣取り、裏抜けで味方のラストパスを引き出そうとする。チームが敵陣深くまで押し込めば、ペナルティエリア内で何度も切り替えして、フリーでクロスやパスを受けようとした。
動きにはスピードがあって鋭い。プレースタイルも動きのキレも、セルティック時代と大きく変わっていないように映った。
最大のチャンスは後半の終盤に訪れた。左サイドで、ウインガーのデマライ・グレイがボールをキープ。岡崎慎司が在籍時のレスターで活躍したこのグレイがクロスボールを入れようとすると、古橋はニアサイドに猛スピードで飛び込んだ。グレイが完璧なタイミングで速いクロスを入れ、古橋もピンポイントで合わせたが、相手選手にブロックされた。惜しくもゴールにはならなかったものの、古橋の持ち味が存分に活きた決定機だった。
一方で、味方とパスの呼吸が合わなかったり、スルーパスが出てこなかったりする場面も少なくなかった。最終的に古橋はネットを揺らすことができず、チームは1-2で敗戦。翌節のチャールトン戦でも古橋は82分から途中出場したが、この試合も無得点に終わった。
QPR戦で気になったのは、バーミンガムの戦い方だった。前半は、CFにドイツの長身マーヴィン・ドゥクシュを起用。31歳FWはスピードもさほどなく、最前線に残ってポストプレーをこなしながら、クロスボールやロングボールの基準点として機能していた。チームとしても、シンプルにクロスを放り込むシーンが多かった。
ところが後半開始時、188センチの巨漢FWに代えて古橋が投入される。この両者は、プレースタイルがまったく異なる。古橋が活躍していない理由は、このあたりにあるように思えた。
そこで、QPR戦でフル出場したバーミンガムのMF岩田智輝に聞いてみた。「後半から古橋選手が入りましたが、前半にセンターフォワードでプレーしたドゥクシュ選手とはタイプがまったく違いました。チームとしてやり方を変えている、ということはあるのでしょうか?」。岩田はこう答えた。
「やっぱり、キョウゴ君は裏抜けがうまい。相手のディフェンスラインが高かったので、監督の意図としては、そこを求めていたのだと思います。だけど(味方が)うまくそこに蹴れてなかったのと、チームとしても狙えていなかった。深い位置でボールを持つこともできていなかったです。キョウゴ君の良さである『クロスに合わせる』プレー自体も少なかった。誰かのためにというより、チームとして狙いをもっと合わせていきたいと思います」
さらに岩田に聞いた。「後半終盤に、古橋選手がニアでクロスに合わせるシーンがありました。あれこそ真骨頂かと思いましたが、ああいう形は練習から取り組んでいるのですか?」と。岩田は言う。
「はい、やってます。ただ『この選手が出たからこうしよう』というのはあまりないですね。まずチームとしてのやり方があって、それを共通認識としてやっているという感じですね」
古橋は、極めて際立った特長を持つ選手だ。
振り返ると、セルティック時代の古橋には明確なゴールパターンがあった。
たとえば、セルティックがボールをキープして相手陣内に押し込んでいる場面。ウインガーが深い位置からクロスボールを供給すると、古橋はピンポイントで合わせて鮮やかに決めた。PA内での鋭い切り返しと素早い動きでフリーになり、クロスをゴールに結びつけたのである。こうした古橋の動きはまさに一級品だった。
そして敵チームが前に出てくれば、古橋はディフェンスラインの裏に抜け、縦パスからネットを揺らす。自慢のスピードとゴール嗅覚を活かし、クロス、縦パスにピンポイントで合わせることでゴールを量産した。
バーミンガムでも、こうした動き自体は錆びついていないように見える。むしろ気になったのは、バーミンガムがチームとして古橋の活かし方を、まだ完全に消化できていない点だ。特長のある選手だけに、古橋に合わせた戦術の落とし込みも、チームとして必要だろう。
一方で、古橋自身にも歩み寄りは求められる。スコットランドリーグにおけるセルティックは、まさに“王様”のような存在だった。チームとしてボールを支配し、チャンスの数も圧倒的に多かった。ポステコグルー体制のセルティックは、古橋のプレースタイルに完璧にフィットしたチームだった。
だが、チャンピオンシップのバーミンガムは、そうもいかない。格下にまわる試合も多く、劣勢の中でチャンスを強引にもぎ取る必要もある。加えて、古橋がバーミンガムで決定機のシュートミスがあったように、揺るぎない自信を取り戻すことも活躍には不可欠だ。
デイビス監督は「キョウゴは必ず点を取る」と言い切る。実際、そうなる可能性は高いだろう。だがゴールの量産態勢に入るためには、チームとしての戦術浸透、そして古橋自身もプレーの幅を広げていくことが求められそうだ。
取材・文●田嶋コウスケ
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