後発の退職代行サービスに“完敗”。「悔しいけど、当然の結果」

――EXIT株式会社を設立されて退職代行サービスの先駆者として注目を集めましたが、その後はいかがでしたか?
EXITがバズった後、模倣するサービスがたくさん出てきましたが、しばらくの間は業界の中でも圧倒的なポジションを保っていたと思います。その状況が大きく変わったのは、ある後発の退職代行サービスが登場してからです。彼らはSNS発信やYouTube活動を積極的に展開し、退職代行というサービス自体の認知度を飛躍的に高めました。
完全に抜かれたと実感したのは、彼らのYouTubeが大きく話題になった2022年か2023年のころです。といっても、その競合が台頭した時点で、すでにEXITはほかの競合企業と横並びの状況になっていました。サービス開始から1年ほどは確かに「退職代行といえばEXIT」と言える状況でしたが、それ以降は業界トップと断言できる状況ではなくなっていたんです。だから、後発に負けたというより、彼らが出てきたときには既に拮抗状態だったというのが正確ですね。
――そんな状況を当時はどう受け止めていましたか?
悔しかったですよ。ただ、それ以上に「追い越されて当然だった」という気持ちのほうが強かったんです。なぜなら、彼らは退職代行業界で他社がやっていないレベルでSNS発信に本腰を入れていたから。彼らが話題になったときも「そりゃそうだよな」と感じました。ちゃんとやっているな、って。
一方の自分たちはというと、情報発信も事業運営も、真剣味が足りなかった。「面白いから」という理由だけで突き進んだことが甘さにつながったと思っています。反省点は多かったです。
――その中で2024年にEXITの代表を退任されたのはなぜでしょうか?
特に大きな理由があったわけではありません。これまでの話で分かると思いますけど、自分、けっこう適当じゃないですか。だから退職代行についても「そろそろ手放してもいいか」という気持ちがずっとあったんです。事業を立て直すモチベーションも、もう自分にはあまりなくて。「こんな中途半端な状態で代表を務めていても仕方がない」と割り切って退任を決断しました。
そして今は、寝坊すると課金される目覚ましアプリ『メザミー』を運営しています。早起きが苦手で、目覚ましやアラーム機能では解決しなかったので「じゃあつくるか」と。「面白そう」という理由で行動しがちなのは今も変わりませんね(笑)。

「仕事が楽しくない」と悩んでいる人へ
――アメリカ留学から大学中退、現場仕事への転身、退職代行の立ち上げ、そして代表退任まで、はたから見ると大胆にも見える決断を潔く下されているように感じます。岡崎さんは迷うことはないんでしょうか?
いや、もちろんありますよ!ただ、迷ったときはシンプルに考えるようにしています。自分ができること・できないこと、やりたいこと・やりたくないことを整理して、リスクとリターンをなんとなく考慮した上で、「じゃあこっちにしよう」とスパっと決める。
もちろん、うまくいくかどうか、100%の確信を持てることなんてありませんけどね。それでも、決断を先延ばしにして後悔するほうが嫌なんです。
――つまり、悩んで立ち止まっているより動くほうがいい、と。
そうですね。悩んでも仕方がないし、実際に行動してみないと結果は分からない。人にアドバイスを求めても正反対のことを言う人は必ずいるので、最終的には自分で決断するしかないんです。それなら最初から直感で決めてしまったほうがいい。極端な話、コインを投げて決めても構わないくらいだと思っています。それを正しい選択だと思い込んでやるしかないのかなと。
多くの人は「悩んでいる」と言いながら、実際には心の奥で既に答えが出ているケースが多いんですよね。それなら、最初に感じた直感を信じて選択してしまえばいいと思っています。
――最後に、スタジオパーソルの読者である「はたらく」モヤモヤを抱える若者へ、「はたらく」をもっと自分らしく、楽しくするために、何かアドバイスをいただけますか?
答えになっているか分かりませんが、仕事って基本的に楽しくないものだと思うんです。だって、ゲームをしているほうが楽しいし、お酒を飲んでいるほうが楽しいじゃないですか。だから「仕事が楽しくない」という悩みを聞いても、「そりゃそうでしょ」と思ってしまうんですよね。
でも、そうやって割り切ることで、むしろ自由でいられると思いませんか。世の中には仕方のないことばかりがあふれているし、そこに文句を言っても何も変わらない。でも、割り切って行動してしまえば、結果はどうあれ自分で選んだ道なので「まあしょうがないか」って思えるんですよ。それがまさしく、自分らしく生きるということなんだと思います。

(「スタジオパーソル」編集部/文:間宮まさかず 編集:いしかわゆき、おのまり 写真提供:岡崎雄一郎さん)

