マーベリック・ビニャーレスは先日、パフォーマンスコーチとしてMotoGPで通算5度の王者であるホルヘ・ロレンソと契約したと発表した。そのロレンソはビニャーレスについて、才能はペドロ・アコスタ以上だと語っている。
かつては現役時代にビニャーレスとコース上で共に走った経験も持つロレンソ。このふたりがタッグを組むという知らせに対しては、冷ややかな物を含む様々な反応があったが、ロレンソは現役時代と同じようにそれらを一蹴している。
引退して6年が経つロレンソだが、自分が積み上げてきたあらゆる知識と経験をビニャーレスに対して注ぎ込み、伝えることを目標にしている。
同時にビニャーレスはこれまで残してきたような成績を、さらに安定して発揮できるようにしたいと考えている。彼の最終的な狙いは、今の競争の激しいMotoGPで悩まされてきた急な成績低下を避けることにある。
「一部の人は、僕らが一緒に(2026年開幕戦の)ブリーラムに行くことすらできないと言っているが、僕は人が何を言おうと気にしたことがない」とロレンソはMotorsport.comに語った。
「彼がまだアプリリア(2024年まで在籍)にいた頃から話をしていて、今年はインドネシアで会ったんだ」
「そこでマーベリックは、僕と仕事をすることに全面的にコミットし、”兵士”になると言ってくれた。直感的に、彼は物事を真剣に受け止める人物だと感じたし、実際にとても落ち着いていて、とても成熟し、非常に”禅”のような状態にある奴だと分かった」
ロレンソはキャリアを通じて、外部の雑音をシャットアウトして、高いポテンシャルを発揮することで知られてきた。今、ロレンソはビニャーレスに対しその集中力を注いでいる。
トレーニングプランはかつてロレンソをMotoGPでも指折りの存在へと押し上げたものと似ているが、さらに改良された内容となっている。バイク上での技術的エクササイズ、身体面でのトレーニング(ストレッチ)、そして精神面のトレーニング(瞑想)を組み合わせた多分野型のプログラムだ。なおここにはロレンソを鍛えてきた父のチチョも加わることになる。
「テニスでは1970年代以降、すべての選手が元選手をコーチにしている。サッカーでもコーチが極めて重要だ」
ロレンソはそう語る。
「モーターサイクルでは、これまではただトレーニングに出かけて周回を重ねるだけだった。陸上選手や体操選手とは、かけ離れていた」
「分析してみれば、父こそが最初の本当のコーチだった。僕としてはミック・ドゥーハンやマックス・ビアッジのような世界王者が、そして父のように、蓄積されたあらゆる知識を持つ技術的コーチがいればよかったと思っている」
ロレンソとビニャーレスの計画は既に始動していて、今週は地面に描かれた8の字を走っている姿も見られていた。これはロレンソがかつて何時間も練習していたことで有名な光景だ。またロレンソはビニャーレスと一緒に、KTMのファクトリー視察も行なっている。
「勝つか勝たないかにつながる要素はたくさんあって、そのすべてに取り組む必要がある」
「最初のひとつは、彼がすでに示している才能だ。次にバイク、次にフィジカル、そしてメンタルがある。バイクは最大限のポテンシャルを引き出した後、逆に制約にもなり得るという点で、結果を左右する存在だ」
「彼ほど才能のあるライダーを、僕は見たことがない」
ロレンソは常に大きなビジョンを描く人物として見られてきたが、ビニャーレスにもそれを求める姿勢がほしいと考えている。ただ、頂点に到達するためには、一歩ずつ進む必要があるともロレンソは語っている。
「ただ勝ちたいだけじゃなく、圧倒したいんだ」
「現時点での僕の目標は、マーベリックを今年のKTMのエースライダーにすることだ。ペドロ・アコスタは非常に優秀だし、長年にわたって極めて懸命に取り組んできているため、簡単なことではないと思う。だけどスピードと才能という点では、マーベリックの方が上だ。彼はアコスタ以上のものを持っている」

