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女子バスケの富士通レッドウェーブが発信する「センサリールーム」の可能性。NBAや欧州サッカーでも広がる認知の輪

女子バスケの富士通レッドウェーブが発信する「センサリールーム」の可能性。NBAや欧州サッカーでも広がる認知の輪

11月22日(土)、富士通レッドウェーブがWリーグ第6週、トヨタ自動車戦で、発達障がい等に伴う感覚過敏の特性がある子どもと家族がバスケを楽しめる「センサリールーム」を試合会場の横浜武道館に特別設置した。2023年にWリーグで初めて実施された活動を年に1回のペースで継続して今回で3回目。試合は残念ながらインフルエンザの影響で中止となってしまったが、「センサリールーム」があることの大切さや、可能性も見えた時間となった。

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 発達障害のなかに特定の感覚刺激に敏感な感覚過敏を持つ人が多くいることはご存知だろうか。聴覚、視覚、触覚、嗅覚、味覚など、複数の感覚領域で見られ日常生活に困難やストレスを引き起こすことがあることもある。ほとんどが本人にしか分からない苦痛でもあるため周囲の理解が不可欠だ。そこで大きな役割を果たしてくれるのが「センサリールーム」である。スポーツ観戦時に流れる大きな音、眩しい光、人混みを避けた遮音設備や照明が工夫された場所は安心感をもたらしてくれる。今やNBAや欧州サッカーの最高峰プレミアリーグが開催される試合会場に「センサリールーム」が常設されるなど世界でも認知の輪が広がってきている。

 日本のスポーツ界でも広がりを見せており、2019年から同様の取り組みをしている川崎フロンターレの「えがお共創プロジェクト」を取材した際、参加した子どもたちや家族の方々も普段は遠ざけているスポーツ観戦ができて喜んでいるのが印象的だった。だからこそ今回の富士通レッドウェーブの試合は中止になってしまい、楽しんでもらえるか、不安は少なからずあったが、センサリールームで過ごした参加者の姿を見て、すぐに杞憂だと分かった。

 最初は慣れない場所に戸惑いつつも用意してある視覚刺激、嗅覚刺激に特化したおもちゃを自分のペースで楽しんでいた。参加者の家族も「普段であれば新しい場所、環境に慣れるのに時間はかかりますが、おもちゃも用意してくれていましたし、すごく過ごしやすい環境だったかなと思います。私たちも普段は人の目が気になりますが、センサリールームがあると心理的にもすごく安心することができるので、利用できてよかったです」と話しており、限られた時間ではあったが安心感のある落ち着ける空間があった。 本来の目的は試合観戦だったが、試合を見れなくても参加者が満足にしている様子を見るとセンサリールームがスポーツ観戦時だけでなく、例えばショッピングモールなどの施設に常設されるまでに発展すると“誰もが暮らしやすい社会”にもなっていくのでは、という可能性も感じられた。今回も含め様々なスポーツ会場でセンサリールーム設置の協力をしている有限会社コス・インターナショナルの小菅秀泰は、そんな社会を実現していくうえでもスポーツの力が必要不可欠だと言う。

「センサリールームのよさを広げる意味でスポーツの力はものすごく大きいものがあります。暮らしのなかにセンサリールームを取り入れられたらいいね、という発信源にもなります。センサリールームでの試合観戦は、限られた人数しか招待はできませんが、応募数は年々と増えてきています。それほど認知が広がっている証拠でもありますし、我々もできるだけ協力をしていきたいと思ってます」

 また富士通企業スポーツ推進室の今井善教さんも、ある思いを語ってくれた。

「私たちはスポーツの力を信じてやっていますし、みんなでよりよい社会を作っていきたいと思って取り組んでいます。スポーツを楽しむのは生きていくうえで大切な一つツールだと考えているので、もっとたくさんの方にスポーツを楽しんでもらいたいと思っています。今回は試合が中止になってしまいましたが、参加者の方々に楽しんでいただけたので試合がなかったとしてもセンサリールームは大きな役割を果たしてくれるんだと感じました」

「障がい」は「個性」。スポーツを通じて発達障がいの特性を理解している人が増えればお互いが手を取り合い、富士通スポーツが目指す「誰もが幸せに暮らせる社会、共生社会の実現」も近づくはずだ。

取材・文●高澤真輝

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配信元: THE DIGEST

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