メルセデスからF1にデビューし、ルーキーシーズンをランキング7位という結果で終えたアンドレア・キミ・アントネッリ。motorsport.comの独占取材に応えた彼が、山あり谷ありのルーキーシーズンを振り返った。
アントネッリは、マイアミGPのスプリントでポールポジションを獲得するなど順調なスタートを切ったが、メルセデスが投入したサスペンションアップデートが不幸にも彼から自信を奪い、さらにヨーロッパラウンドに入ってからの注目度と厳しい視線が、精神的なエネルギーを大きく消耗させていった。
シーズン中盤はリタイアが続いた中、9月のイタリアGPで彼はどん底を迎える。FP2開始早々のコースオフから始まり、決勝でもスタートで順位を落としてペースに乗れず、最終的にはザウバーのルーキー、ガブリエル・ボルトレトの後方となる9位でレースを終えた。
この際にメルセデスのトト・ウルフ代表は、アントネッリのレースを「期待はずれ」だったと表現した。
「(金曜日に)マシンをグラベルで埋めてしまっては、そのまま上位に食い込むとは思えない。レース全体が期待外れだった」
「ただし、それで彼へのサポートや将来への信頼が揺らぐことはない。彼は本当に、本当に優れたドライバーになると信じている。だが今日は期待外れだった」
motorsport.comの独占インタビューでアントネッリは、イタリアGP後にウルフ代表、そしてレースエンジニアの“ボノ”ことピーター・ボニントンと行なったミーティングが、シーズン後半の流れを大きく変えたと語っている。
「苦戦していた時期には、少し自分を見失っていた。フラストレーションを感じることが多く、結果のことを考えすぎていた」とアントネッリは言う。
「マシンに乗るたびに自分に大きなプレッシャーをかけてしまい、うまく走ることに集中できていなかった」
「モンツァのあと、僕とトト、そしてボノでミーティングがあり、そのあとで『一度すべてをリセットして、ゼロからやり直そう』と自分に言い聞かせた」
「彼らは特にモンツァでのパフォーマンスについて、思っていることを率直に僕の前で言ってくれた。でもそれは建設的な批評で、前向きに受け止めることができた。それがリセットにつながり、『よし、ここから状況を変えよう』と強く決意するきっかけになった。そして実際に、状況は変わった」
メルセデスがオランダGPから以前の仕様のサスペンションに戻したことも追い風となり、アントネッリはサンパウロとラスベガスで表彰台を獲得するなど、明確な進歩を見せた。
2025年シーズンをランキング7位で終えた19歳のアントネッリは、ルーキーイヤーに経験した苦しみが、2年目に向けた確かな土台になったと感じている。
「ザントフールトでリヤサスペンションが旧仕様になったことは僕にとってプラスになったけど、何よりの転機はメンタルのリセットだった」
「基本に立ち返ったんだ。今までと同じように、マシンに乗ったら毎回きちんと走ることを心がけた。今だから言えるけど、困難な時期を乗り越えたことで、精神的に一段強くなれた。あの本当に厳しかった数ヵ月を乗り越えられたのは、決して当たり前のことではない。大変だったけど、有益だった」
最後に、F1デビュー戦を迎える前の“過去の自分”に何か伝えるとしたら、何を言うかとの質問に、彼はこう答えた。
「もっと自分の直感を信じろ、ということだ」
「自分の能力、このチャンスをつかむことを可能にした素質を信じること。マシンに乗るたびに、殺し屋のようなメンタリティを持つこと。そしてコース上では、すべてに正面から向き合えということだ」

