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勝利だけが延命条件──“マッチボール”に追い込まれたマドリーのシャビ・アロンソ監督の孤独な戦い

勝利だけが延命条件──“マッチボール”に追い込まれたマドリーのシャビ・アロンソ監督の孤独な戦い

スペインでは、あと1ポイント取れば、その試合の勝利が決まるテニス用語のマッチポイントをサッカーに転用して、解任の危機に瀕している監督が迎える決定的な試合を“マッチボール”と呼ぶ。

 開幕以来、成績が低迷し、いくつかのマッチボールをしのいできたレアル・ソシエダのセルヒオ・フランシスコ監督は、ラ・リーガ第16節でジローナにホームで逆転負け(1-2)を喫した翌々日に解任された。

 地元紙『noticias de Gipuzkoa』のミケル・レカルデ記者は、試合前の時点で、「クラブ上層部が今後数シーズンにわたって彼を船長としてチームを指揮させる気がなく、彼の続投が常に綱渡りの状態となり、繰り返し決断が先送りにされるのであれば、今すぐに解任すべきだ」と見解を述べていた。
  一方、同じラ・リーガ16節に敵地でアラベスを2-1で下し、マッチボールを制して延命を果たしたのがレアル・マドリーのシャビ・アロンソ監督だ。しかしスペイン紙『AS』によると、まだ綱渡りの状態は続いており、17日のコパ・デル・レイ3回戦のタラベラ(3部)戦は3-2で勝利したものの、20日に実施されるラ・リーガのセビージャ戦(17節)も同様にマッチボールになるという。

 ラジオ局『Cadena SER』のスポーツ番組『Hora 25 Deportes』の司会進行役を務めるヘスス・ガジェゴ氏は、シャビ・アロンソ監督の置かれた立場について次のように記している。「現時点では、勝利だけが、彼の地位を維持するだろう。なぜなら、彼がチームの戦い方やロッカールームでの影響力を変えられるという見通しは、夢物語のように思えるからだ。試合に勝ち続ける限りは持ちこたえるだろうが、周囲の熱は冷めており、就任時にその手腕に寄せられた期待は、すでに薄れてしまっている」

 シャビ・アロンソ監督は介入型の監督という看板通り、就任当初は、主力にも遠慮なしの選手起用を行なうという気概を見せていたが、途中交代に不満を爆発させたクラシコでのヴィニシウス事件がターニングポイントになった。

 現地では、クラブが選手側に回ったという論調がもっぱらで、事実、ヴィニシウスは自身の公式Xに謝罪文を掲載しただけで何のお咎めもなく、その一方でシャビ・アロンソ監督は求心力を低下させていった。それは、クラシコまでの公式戦12試合で5度あったヴィニシウスの80分までの途中交代が、その後の10試合では、すでに勝敗が決した展開でのバレンシア戦とアスレティック・ビルバオ戦の2試合に限られている。 ソシエダでの選手時代やBチームの監督時代からシャビ・アロンソをよく知る前出のレカルデ記者は、今後に悲観的な見方をしている。「シャビ・アロンソはマドリーを改革し、成功を収めるために必要なすべてを備えているように見えた。しかし、彼が予想していなかったのは、選手たちの反発と、フロレンティーノ・ペレス会長の共謀だった。会長は数週間前からアロンソを解任したいと考えており、オフレコで『チームに重要なのは、ヴィニシウス、ベリンガム、エムバペだ。監督はいくらでもいる』と繰り返し述べているという。

 いま、マドリーで起こっている状況は、ペレス第1期政権時代の2004年夏を想起させる。当時の指揮官、ホセ・アントニオ・カマーチョは、開幕からわずか6試合を消化した所で『仕事をさせてくれないなら、去るのが最善だ』と言って辞任した。監督に権限が与えられなければ、いくら経験と情熱を持っていても、それでは十分でない好例だ。アロンソは今、同じ岐路に立たされている。彼に自由に仕事を進められる裁量を与えるのか。さもなければ、成功はおろか、近い将来の解任を回避するのさえ不可能になるだろう」

 もちろん、アラベス戦の勝利をきっかけに巻き返しを期待する声もある。「シャビには仕事を続けさせるべきだ。評価は今下すものではない」という、マドリーOBで人気解説者のアルバロ・ベニート氏の意見は、正論だろう。
  しかし、フリージャーナリストのミゲル・キンターナ氏は、現在の中途半端な状況は誰のためにもならないと強調する。「ペレス会長は、もしアロンソを信頼していないのであれば、彼を解任すべきだ。それはシャビについても同様だ。もし、自分に決断を下す権限が与えられていないと判断するなら辞任すべきだ。マドリーには決断力、結束力、そして時間が必要だ。それ以外は、今日だけの一時的な解決策に過ぎない」

 同じくマッチボール続きだったソシエダのフランシスコは、監督の座を追われた。果たしてシャビ・アロンソの運命やいかに。

文●下村正幸

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配信元: THE DIGEST

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