
恋愛では、相手を信じたい気持ちと、だまされたくない気持ちが同時に動きます。
では女性は、デート中の相手の「欺瞞(ぎまん)」を避けるために、具体的にどんな行動を取っているのでしょうか。
米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)らの最新研究で、女性がデート相手の欺瞞を見抜いたり予防するために使う行動が整理され、5つのカテゴリーにまとまることが示されました。
では、どんなテクニックを使うのでしょうか?
研究の詳細は2025年11月10日付で学術誌『Evolutionary Psychological Science』に掲載されています。
目次
- 女性が使う戦略は「5つのカテゴリー」に分類できる
- どんな性格だと、どの戦略を使いやすいのか?
女性が使う戦略は「5つのカテゴリー」に分類できる
研究の出発点はシンプルです。
デートの場面では、男性側が自分の利益のために相手をだます可能性があります。
自分の性格や行動を実際より良く見せて、性的関係へ近づこうとするのです。
こうした「性的欺瞞」は、女性にとっては将来の負担やリスクにつながり得ます。
そのため、男性側の欺瞞と女性側の見抜きのあいだに、いわば「軍拡競争」のような関係が生じる可能性があるという見立てがありました。
では実際に、女性は何をしているのか。
研究では、まず女子大生に自由記述で「だまされないために取る行動」を尋ね、回答を整理して43種類の反・欺瞞行動のリストを作成。
次に別の参加者集団が、その43行動を自分ならどの程度行うかを評定し、統計解析で行動のまとまりを抽出。
その結果、反・欺瞞行動は5つのカテゴリーにまとまると示されました。
1つ目は「統合(Integration)」です。
これは、相手を家族に紹介する、相手の家族に会うなど、家族という目を関係に入れる戦略です。
家族が関与すると、相手の背景や意図が多方面から点検されやすくなります。
研究では、この統合が最も頻繁に用いられる領域として位置づけられました。
恋愛が当人同士だけの問題ではなく、家族が配偶者選択に深く関わってきた歴史とも整合する、と研究者は解釈しています。
2つ目は「慎重さ(Reticence)」です。
これは、恋愛関係の進展を急がず、コミットメントや性的親密さを遅らせ、信頼が固まるまで距離を保つ戦略です。
時間をかければ、相手の言葉と行動の整合性を観察できます。
恋愛初期の高揚感は判断を甘くしがちですが、速度を落とすことで、危険信号を見落としにくくなるという発想です。
3つ目は「ソーシャルメディア」です。
これは相手のオンライン上の情報、友人のプロフィールなどを調べ、相手の説明とデジタル上の痕跡が食い違っていないかを探る行動です。
現代ならではの確認手段で、言葉の真偽を「別ルートで照合する」発想だと言えます。
4つ目は「宗教的一致(Religion Matching)」です。
宗教的信念の共有を重視したり、相手が実践的な信者かどうかを確かめたりする戦略です。
宗教心のある人は誠実さや貞節に関する規範を守りやすいはずだ、という経験則に頼る面があると研究では説明されています。
これは外国特有の考え方であって、日本にはあまり当てはまらないかもしれません。
5つ目は「不信(Distrust)」です。
これは、より能動的で対立的な確認です。
たとえば、すでに答えを知っている質問をあえて投げ、相手が嘘をつくかどうかを試すのです。
研究では、この領域は最も一般的ではない戦略として扱われました。
正面から疑う行為は関係を冷やす危険もあるため、頻繁には使われにくいのかもしれません。
どんな性格だと、どの戦略を使いやすいのか?
この研究の面白い点は、5つの戦略を示しただけでなく、「どんな人がどれを使いやすいか」にも踏み込んだことです。
参加者は複数の心理尺度にも回答しており、研究者は戦略の使い方と個人差の関連を分析。
まず、短期的な関係に前向きな人ほど、「統合」や「宗教的一致」を使いにくい傾向が示されました。
短期的な恋愛関係を重視する場合、長期的な関係を前提にした精査は、手間や障壁と感じられやすいという解釈が提示されています。
家族に紹介するほど関係を公的にしない、宗教的な整合をそこまで重視しない。目的が違えば、必要な確認も変わるということです。
次に、回避型愛着が高い人ほど「慎重さ」を使いやすい傾向が示されました。
回避型愛着は、親密さへの不快感や距離を取りたくなる傾向と関連づけられる概念です。
恋愛関係に慎重になることは、感情的なリスクを避ける自己防衛であると同時に、欺瞞に巻き込まれないための防御にもなります。
今回の研究が示したのは「女性の警戒心が一枚岩ではない」ということです。
家族を巻き込む人もいれば、時間をかけて相手を見極める人もいます。
ソーシャルメディアで照合する人もいれば、価値観の一致を手がかりにする人もいます。
あえて試験問題のように問い、相手の反応を見る人もいます。
恋愛に慎重になることは、ときに臆病さとして片づけられがちです。
しかし今回の枠組みでは、それは「疑う性格」ではなく、「リスクを管理するための具体的な手段」として見えてきます。
「相手を信じたいからこそ、確かめる」
その確認作業のバリエーションこそが、現代のデートの現実なのかもしれません。
参考文献
New study identifies five strategies women use to detect deception in dating
https://www.psypost.org/new-study-identifies-five-strategies-women-use-to-detect-deception-in-dating/
元論文
Women’s Anti-Deception Tactics in Mating: A Preliminary Investigation
https://doi.org/10.1007/s40806-025-00454-2
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

