オランダのアヤックスは12月16日、今夏にアーセナルを退団してフリーとなっていた日本代表DFの冨安健洋との契約締結を発表。契約期間は来年6月30日までで、背番号は32番に決定している。
近年は度重なるふくらはぎの負傷でコンスタントにピッチに立てず、昨季は膝を痛めて1試合のみの出場に終わるなど、苦しい時期を過ごしてきた27歳は、ようやく決定した新天地について、「クラブと話をした時、自分を信頼してくれているという気持ちを感じました。それがアヤックスを選んだ理由です」と語り、このオランダの名門の現状にも言及し、意気込みを語った。
「クラブの状況は分かっています。若い選手が多く、今は少し難しい時期にありますが、それでもリーグ優勝を狙えるチャンスはあると思っています。このクラブでタイトルを獲りたいです。僕はまだ、一度もタイトルを獲った経験がないからです」
自身のコンディションについては、「12か月間戦線から離脱していましたが、その間にどれだけ努力してきたかは自分が一番分かっています。より強くなって戻るために、本当に必死に取り組んできました。今は復帰する準備ができていると感じています。あと数週間は必要ですが、状態は良く、準備は整っています」と自信を示している。
さらに、「CBとしてもプレーできるし、SBもこなせます。どの試合でも、ピッチ上で全てを出し切るとファンに約束します。どのポジションでプレーするかは問題ではありません」とユーティリティーぶりを強調し、「世界でも屈指のクラブのひとつ(アーセナル)でプレーし、そこで多くの経験を積みました。ピッチ内外で、若い選手たちにとっての模範になれればと思います」と、プレー以外での貢献も誓った。
対してアヤックスのフットボール・ディレクターであるマレイン・ボイカーは、「タケヒロは、複数のトップリーグで豊富な経験を積み、優れたDFである点を証明してきた。彼は知性に富み、両足が使える守備的な選手だ。スカウティング部門およびコーチングスタッフとともに、ここ数週間で彼の映像を数多く検証し、全員が非常に前向きな評価を下した」と冨安の獲得の経緯を明かし、以下のように続けている。「負傷歴についても、重要な判断材料のひとつとなった。彼はリハビリに真剣に取り組んでおり、メディカルスタッフによる詳しいチェックもすでに終えている。就労許可が正式に下り次第、すぐにチーム練習へ参加できる状態だ。これから試合勘を取り戻す必要があるものの、その経験を考えれば、ほぼすぐに順応できると我々は考えている。契約面においても、双方にとって良い形での協力関係を築く方法を見出した。タケヒロは若くて才能豊かな我々のチームに、短期的により大きなバランスをもたらしてくれる選手だと期待している」
ちなみにサッカー専門メディア『VP』は、「アヤックスは冨安を“掘り出し物”と捉えており、この選手の長期残留をFDのボイカーは期待しているようだ。加入会見の中で、冨安が『アヤックスは過去にチャンピオンズリーグを4回制している』と語ると、ディレクターは『君には5回目の優勝をもたらしてほしい。今季ではないけどね』とウインクを交えて語った。ファンたちはこのやりとりを、ボイカーが冨安とより長く契約を続けたいという明確なサインだと受け取っている」と綴った。
サッカー専門メディア『FOOTBALL TRANSFER』は、「多機能型DFである冨安には、主に経験と柔軟性をアヤックスの最終ラインにもたらす役割が期待される。現実的には、ウィンターブレイク明け以降に本格的にチームに加わる見通しだ。復帰後の状態が良く、チームとの連係が順調に進めば、契約延長も十分に想定されている。彼は国際舞台でも経験豊富なベテランであり、コンディションが整えば、さらなる付加価値をもたらす存在となるだろう」と、ポジティブな見解を示している。
一方、オランダの公共放送『NOS』は「クレバーだが怪我をしやすいDF」と新加入選手を紹介し、サッカー専門サイト『VoetbalNieuws.nl』は「アヤックスが驚きの移籍を完了」「クラブは短期契約でリスクを最小限に抑え、富安は2026年ワールドカップに向けて実力を発揮する機会を得る」と伝えた。
また、この補強に対しては否定的な意見も寄せられており、オランダのトーク番組『Vandaag Inside』において、元オランダ代表FWのルネ・ファン・デル・ヒープが「2年間プレーしていない日本人選手を獲得……。人々は『(フリーなので)お金はかからない』と言うが、住む家を用意し、車も手配する必要がある。そんな面倒をかけても、彼は絶対にプレーしない」と断言。共演者のヴァレンティン・ドリーゼン記者も「アヤックスはリハビリ施設じゃないだろ? 一体何をやっているんだ?」と異論を唱えている。
構成●THE DIGEST編集部
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