楽しさは自分でつくるもの。小さなことでも良いから見つける姿勢を
──岩佐さんは「これまで多くの介護施設で勤務してきた」とイベントでおっしゃっていました。どんな施設で何を学んできたのか教えてください。
最初は特別養護老人ホームで約4カ月はたらきました。要介護3以上の方が中心の環境で、介護の基礎を実地で学べたのですが事情があり退職。仕事の中で利用者さんの体に触れる機会も多かったので、介護にも活かせると考えエステティシャンの資格を1年かけて取得しました。
そのあとはデイサービスと訪問介護を同時期に1年、パートでダブルワークをしました。とても居心地の良い職場だったのですが、利用者さんには歩行ができて生活自立度の高い方が多く、身体介護の比率が少なかったため、次に病院が母体である介護老人保健施設へ移る挑戦をしました。約1年弱、看護師さんや薬剤師さんなどから薬の処方にまつわることなど、実践的な医療の知識を学ぶことができましたね。
続いて、今まで経験したことのなかった介護付き有料老人ホームで約9カ月勤務し、サービスに対価をいただく場だからこそ求められる業務水準や、お部屋ですごす時間の長い入居者の小さな変化を短時間で見抜く視点を養いました。
現在は子育てとの両立を考え、ダブルワークをしていたときのデイサービス施設に復帰。現場での学びを続けながら、座学でも知識を深める期間にしようと思っています。
これだけ多くの経験を積んでいる理由は、将来自分で施設をつくってみたいという夢もありますし、体が動くうちに、短い期間でさまざまな経験をしておきたいなと思っているからなんです。
──将来はご自身で施設をつくってみたい。素敵な夢ですね。具体的にどんな施設にしていきたいか、イメージはありますか?
自分が老後に入りたいと思える場所ですね。これからの世代は遊びや文化の経験値が高く、スマホやPCを使うのも当たり前。今の施設のままだと、物足りなく感じる人もいると思うんです。Netflixなどが鑑賞できるシアタールームや飲食、お酒も楽しめるようなパーティールームがあったら最高だなと思います。
ただ、遊びを充実させるには、その分人員配置が必要になります。介護業界は特に人手不足が深刻なので、少人数でも心地良い施設をどのようにつくっていくのかは考えていきたいですね。
人手不足解消のために自分ができることとして、今は親友の西田とともに介護のお仕事について発信する活動も行っているので、そこで介護職の良さについてもっと多くの方に知ってもらいたいです。
──ほかに、介護についてこれから発信していきたいことなどがあれば教えてください。
特に若い世代が、ご自身の今後や介護に関心を持ってもらえるような発信をしていきたいですね。病気や事故は突然起こりますし、認知症で家にこもりきりなどになってしまうと、施設への抵抗が強くなることもあります。何か起こってからではなく、体も心も元気なうちに「ここなら良いかも」と思える施設を見に行ってみると良いと思います。
また、介護士の人手不足の課題は税金の問題なども絡んでいて複雑ですし、国に動いてもらうのも簡単ではありません。だからこそ、できるだけ早い段階からご自身でも運動や頭の体操、外出で孤立を防ぐなど「今できること」に取り組み、ご自身の要介護状態を遅らせるために対策をすることが重要です。
皆さんに介護についてもっと知ってもらうために、私も発信やイベントを続けていきます。12月21日には東京で介護と防災について学べるイベントも行うので、ぜひ関心の入口として来ていただけたらうれしいです。
──最後に、スタジオパーソルの読者である「はたらく」モヤモヤを抱える若者へ、「はたらく」をもっと自分らしく、楽しくするために、何かアドバイスをいただけますか?
楽しさは外から与えられるものではなく、自分の姿勢でつくるものだと思っています。芸能界ではたらいていたころ、「どう頑張っても、これは嫌だ」と思ってしまう現場もありました。それでも、その場の中で自分が少しでも笑えることを見つけると、気持ちが軽くなりました。ちょっとした人間観察のような、小さな工夫で良いんです。
自分で「つまらない」と決めてしまうと、毎日がその通りになります。逆に「楽しもう」と決めるだけで、見え方が変わり、同じ空気を持つ人も近づいてきます。前向きに仕事を楽しんでいる人と話すことも、良い影響を受ける手段の一つですね。
ただ、仕事は人生のすべてではありません。仕事の中でも、仕事以外でも、小さな楽しみを自分で用意する。まずは私生活からでも良いので、「自分で楽しむ」という習慣を身につけてみてほしいです。

「スタジオパーソル」編集部/文:朝川真帆 編集:いしかわゆき、おのまり 写真:朝川真帆

