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荒井晴彦 監督 & 咲耶が語る 妥協なしに作り上げた「昭和」の匂いが香る『星と月は天の穴』

荒井晴彦 監督 & 咲耶が語る 妥協なしに作り上げた「昭和」の匂いが香る『星と月は天の穴』

体当たりの演技が生み出した幸せな時間

池ノ辺 撮影は大変だったんじゃないですか。

咲耶 大変な日ももちろんありました。それこそ朝から晩までラブホテルで撮影があったりで、その日は結構辛かったんですけど、でも全体的に私は終始楽しかったです。幸せな時間でした。

池ノ辺 それは素晴らしいことですね。

荒井 実は途中で彼女が左利きだというのがわかって、それでちょっと俺、パニクったの。

咲耶 お蕎麦屋さんでの食事のシーンですね。右手を使う練習はしたんですよ。でもオーディションで決まってからクランクインまでひと月ちょっとしかなくて、難しかったです。

池ノ辺 もともと左利きなんですね。

荒井 なんか変な食べ方してんなと。早めにわかっていれば綾野君に「無理しなくていいよ、左手で食べなよ」と言わせたのに。もう、なるべく手を写さないようにするしかなかった。

池ノ辺 違和感はなかったですよ。今回は、オールヌードで絡みのシーンもありました。私はすごく綺麗だと思って観ていたんですが、監督としてはどういう演出があったんですか。

荒井 何もしてないよ。

咲耶 全然してなかったですね (笑)。

池ノ辺 じゃあ「二人でやって」という感じだったんですか。

咲耶 そうですね。カメラなしのドライをやって、じゃあこういう動きでね、はい、スタートと(笑) 。

池ノ辺 綾野剛さんと共演されていかがでしたか。

咲耶 綾野さんはとっても優しかったです。私がほとんど素人に近いものですから、たくさんアドバイスしていただきました。綾野さんにおんぶにだっこという感じでしたね。

荒井 そうそう。彼が、こういう時はこうしろとか、いろいろと教えてくれてたみたい。

咲耶 たとえば、牽引などしている時に、「お芝居ちょっと短くしてください」と言われたら、こういうコツがあるよとか、たぶん荒井さんは今、こういうことが言いたいんだと思う、とか、いろんなアドバイスをくださいました。しかも綾野さんて教え方がものすごくお上手なんです。だからスッと入ってくるんですよ。本当にありがたかったです。私自身、結構プレッシャーが大きかったんですけど、綾野さんのおかげで、気楽に、リラックスしてできた部分が大きかったと思います。綾野さんと共演できたのは、運がよかったです。

池ノ辺 綾野さんはいかにも昭和の作家という感じでしたね。

荒井 この間彼が出演している『愚か者の身分』(2025) という映画を観て、ああ、この映画のために彼はあの体を作っていたのかとわかりました。衣装合わせの時に筋肉がしっかりついていてあまり吉行淳之介っぽくなかったんですよ。それでちょっと落とせるかなと言ったら、落としてきてくれた。器用な人だよね。

池ノ辺 さすがプロですね。色気がすごくあって素敵でしたよね。

妥協なしに作り上げた「昭和」の匂い

池ノ辺 監督は何もしていないとおっしゃいますけど、映像や演出はもちろん、脚本も素晴らしかったです。監督にはファンも多いですから、そんなに不安がらなくても大丈夫ですね (笑)。

荒井 咲耶にも言われたけど、エロジジイと思われているんじゃないかな (笑)。

池ノ辺 まあそれは、そうかもしれないですけどね(笑)。

荒井 ただ、今、こういう映画はないと思うから。

池ノ辺 観ていて、全てのものにすごく昭和の匂いを感じました。そうそう、こうだったと。そこは、ワンカットワンカット妥協なしにこだわっていて、これくらいでいいやという感じが全くしませんでした。

荒井 だって俺は平成とか令和って知らないもの。時間が止まっている。

咲耶 まだ昭和を生きてるんですよね (笑)。学生運動に取り残されている。

池ノ辺 演出上で特に気にしていたところはあるんですか。話し方とか。

荒井 それは彼女が自分で考えてきたみたいよ。

咲耶 60年代の映画やドキュメンタリーなどを見て、当時の女性の喋り方などを勉強しました。一番参考にしたのが、1964年の増村保造監督の『卍』という作品の若尾文子さんです。

荒井 若尾文子とは気づかなかったな (笑) 。

咲耶 レオナさんは気づいてました (笑) 。

配信元: otocoto

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