
「日本とは全然違う」「すごく戦術的」ブライトンで躍動するなでしこ清家貴子が語るイングランドサッカーと現在地。“同僚”の三笘薫には「影響を受けています」【現地発インタビュー】
2023-24シーズンのWEリーグMVPと得点王のタイトルを置き土産に、日本を発った清家貴子。当時27歳だった彼女が自身初となる海外挑戦の舞台として選んだのは世界最高峰と称されるWSL(Women's Super League = ウィメンズ・スーパーリーグ)だった。三笘薫が所属するブライトンの女子チームに加入した昨シーズンは、同リーグ史上初となるデビュー戦ハットトリックという鮮烈な形でスタートを切り、リーグ戦18試合に出場して6得点と上々の形で1年を終えた。
迎えた今季。2025-26シーズンも、チームの中心選手としてここまで全試合に出場し、4ゴール1アシストを記録するなど、その存在感は増すばかりだ。来年3月には、なでしこジャパンの一員として、オーストラリアで開催されるAFC女子アジアカップに挑むことになるはずだが、2027年ブラジル女子ワールドカップ予選、さらに2028年のロサンゼルスオリンピックのアジア2次予選も兼ねるだけに、重要な意味を持つ大会である。
ブライトン、そして日本代表をけん引する中心選手の一人としてさらなる飛躍が期待されるストライカーがサッカーダイジェストWebの単独インタビューに応じてくれた。2025年は「フットボールを知れた」と語る清家が考える現在地、そして新たな挑戦への思いとはいったいどんなものか。
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――今季ここまでブライトンでは全試合出場されています。ご自身のパフォーマンスをどう評価していますか。
「このWSLという環境にもだいぶ慣れてきて、ビビらずに戦えていると思いますし、その中で去年よりもよりチームとフィットしてきている。チームに求められてる形と自分のやりたいプレーがだんだん近づいてきて、それが結果として、今はだいぶコンスタントに点が取れていて、良い形で繋がってるんじゃないかなと思います」
――直近の5試合で3得点。チームも上向きになっていると思いますが、同様に清家選手個人も調子は上がっている印象を受けます。試合を重ねるごとに良くなっている意識はありますか。
「そうですね。身体もフィットしてきてますし、何より、戦術面的に自分のやりたいプレーに迷いがなくなったというか。昨シーズンまでは自分のしたいプレーとチームに求められているプレーが違っていて、その中で『どうしたらいいんだろう?』みたいな迷ってる時間とか、そういうのがありました。それが今は、そういうのがだんだん減ってきたかなと思います」
――フィットしているという話ですが、ご自身の中で昨シーズンは何を学び、今季はどのような違いが出ていると感じていますか?
「やっぱりこっちのサッカーはすごく戦術的で、特にいま自分がいるチームの監督がより戦術的というのはあると思うんですけど、その中で昨シーズンに関しては立ち位置について結構うるさく言われたり、さらにその立ち位置でのボールの受け方だったり。ボールに触る回数が少ないことへの、なんかストレスみたいなのが昨季はありました。ただ今季に関して言えば、チームがより自分のことをうまく使ってくれる、信頼を得てボールが入ってくるのもありますし、与えられた場所、プレー時間の中で自分に求められているプレーというのがどういうものなのか。1対1の部分であったり、そういうのが分かってきたので、そこを練習の中でしっかり磨いていって、対人の部分での自信にも繋がってきてるのかなって思いますね」
――清家選手の言葉とおり、現在のブライトンは戦術的なクラブだと思います。具体的には、例えばレッズと比較してどう違うのでしょうか。
「具体的な戦術の話はできないんですけど、毎日ミーティングが30分以上、もっと長い時もあったりします。練習の中でも毎週毎週対戦する相手に対してしっかり立ち位置を取って、そこから相手のシステムだったり、『こういうプレーをしてこう』ということを細かくやります。試合のフォーメーションだったりを若干変えていったり、守備の仕方も、事細かく指示されていて。ボールの使い方であったりの確認もかなり入念にやるところは、日本にいた時、日本のチームとは全然違うなと思いましたね」
――以前にお話をさせていただいた際、フィジカル面やスピード面での違いについても触れていました。イングランドで1シーズン半を過ごして、どのような成長を感じていますか。
「やっぱり移籍してすぐは、『速いな、強いな』という印象は周りにあったんですけど。それに慣れてきたのもありますし、チームメイトから『あなたは速いんだから』とか、そういうなんか“速いキャラ”みたいなのにこっちでもなってきて(笑)。自分って『こっちでも全然通用するもの持ってるんだな』っていうのを自覚ができましたし。それをはっきりした形で強みにできるというか、自分として自信を持てているシーズンになっています」
――女子も男子も日本人選手がイングランド国内で増えて、活躍している。重宝される理由は、そういったスピードとかアジリティの部分もあるのでしょうか。
「アジリティやテクニックの部分では、本当に日本人は優れていると感じます。戦術理解力も高いですし。良い意味で自分の“個”を出しているというか、うまくチームにフィットしていく力が各々あると思う。それが重宝されている理由なのかなと風に思いますね」
――ブライトンにも今シーズンから南萌華選手と角田楓佳選手という、レッズ時代からの後輩でありチームメイトだった2選手が加入しました。彼女たちの存在は清家選手にとってどのようにプラスに働いてますか。
「かなり自分にとってはプラスですね(笑)。やっぱり去年だと、プレー面で戦術的に思うことがあったり、なにか話したいことがあっても、英語でわざわざ話すことじゃないなみたいな感じで、自分の中で消化することばかりだったのが、ちょっとしたことでも話し合いますし。ポジション的にもディフェンスライン(南)、中盤(角田)、そして自分が前っていう風に、それぞれ違う中でサッカーの話だったりができる。で、その中でうまく解釈合わせられるっていうのは、本当にプラス。私生活においてもよく一緒に過ごしていて、そういう面でも本当に来てくれてありがたいなというか(笑)。みんな一緒にいて楽しいなと思いますね」
――彼女たちについて、(獲得する前に)クラブ側から『こういう話があるんだがどう思う?』という、相談はありましたか。
「クラブが萌華のことを呼びたいっていうのは知ってたし、彼女自身もチームを探してるっていうのは知ってたんですけど...。なんかあんまり自分から、『来て来て!』と言うのも違うなと思って。めっちゃ来てほしかったんですけどね(笑)。ブライトンの良さを全面に押し出して伝えつつ、はっきりとは言わずに、本人の意見を尊重して。でも待っていたら来てくれたんで、めっちゃ嬉しいですね!
――両選手とも清家選手がクラブにいるのはとても頼りになると思います。生活面なども含めて、逆に何か教えられることもあったのでは?
「まあまあ、それなりに。やっぱ1年いるんでありますけど、すぐに2人とも生活に慣れましたし。2人ともチームのみんなから愛されていて、うまくやっていけてるんじゃないかなと感じています」
――そういった後輩選手を含めて、清家選手の29歳という年齢は、チーム内でも結構経験豊富な方だとは思います。ブライトンでは、監督さんから「リーダーシップを見せてくれ」という話はあるのですか。
「ないですね(笑)。元々、多分、日本にいても自分はそういう感じじゃないと思うんで、ないです!しかも、自分からそんなみんなとコミュニケーションめちゃくちゃ取るタイプでもないし、プレーでうまく見せれたらいいかなっていう風に思ってます」
――その部分はしっかり見せていらっしゃいますよね。なでしこジャパンでも、プロフェッショナリズムの高さを含めて若い選手から模範にされていると思います。でも、ご自身ではあんまり考えたことはない感じですかね。
「全然考えたことないですね(笑)」
――以前にお話を聞かせていただいた時には、英語にも徐々に慣れてきていると話していた。現在はどうですか。
「自信は全然ないですけど、生きてはいけるっていうか(笑)。生活できるぐらい、チームメイトとコミュニケーションを取って日常生活送れるぐらいには、慣れてきたかなと思います」
――チームメイトと一緒に遊びに行ったりはするのですか? 先日もインスタグラムで南・角田の両選手と3人でセブンシスターズ(注:イングランド南部にある、ハリー・ポッターのロケ地としても使われた高くて美しい崖で有名な絶景スポット)へ行った様子をあげていました。オフの日にはほかの選手とかと遊んだりはするのですか。
「いや、そんな行かないですね。家にいることも多いほうだと思います。でもロンドンにはけっこう行きますね。日本人選手、なでしこの選手とかとオフの日に会うことはめちゃくちゃ多いので、その時にはロンドンで会う機会が多いですね」
――そういった際にはサッカーが話の中心になるのですか。
「サッカーの話もしますし、代表の話もしますし、それではない話もたくさんしますし、本当にいろいろな話をします」
――同様にブライトン(男子)でプレーする三笘薫選手も、筑波大時代の後輩ですし、昔からの関係性があると思います。以前お話を聞いた時は、あまり会う機会がないと言っていましたよね。
「最後はいつ会ったかな...。会う頻度はそんなに変わってはないですけど、この前も試合見に来てくれたりして。(三笘選手の)奥さんも若干交流があったりするので、ちょこちょこ会う感じですね」
――ポジション的にも似ていますし、ドリブル、スピード、フィニッシュワークを得意とするプレースタイルも似ている部分があると思います。お互いに刺激を受けられる関係性ではないでしょうか。
「そうですね。三笘選手が自分から何か刺激を受けるかわかんないですけど(笑)。プレー面でも、プロフェッショナルな部分、ストイックな部分からも影響を受けています。今はちょっと怪我していますけど(編集部・注/12月13日のリバプール戦で復帰)、プロとしてのあり方みたいなのは本当に強く感じますし。それを知ってるからこそ、さらに活躍してほしいなっていう気持ちもあります」
――代表ではニルス・ニールセン監督が昨年末に就任して、直後のシービリーブスカップでいきなり優勝。今年は3連敗もありましたが、ニールセン政権下でチーム自体にはどのような変化がありましたか。
「チームとしてというより、選手間でより話し合って、『こういうプレーをしよう』とか、『こうしていこう』という機会は、以前より増えたんじゃないかなっていうのは感じますね」
――良い意味で自主性を重んじるスタンスでしょうか。
「そうですね。それもあるし、監督としても多分そうやってチームで話し合うことをすごいなんか求めているんだと思います。選手たちが話し合ってて、結構喜んでいましたよ(笑)。まあ、それは関係あるかわかんないですけど。色々なチームで、色々な選手がプレーしていて、それぞれ持っているサッカー感とかも違う。そういうものをすり合わせていくっていう時間は必要だと思うし、徐々に増えていってるのかなとは思います」
――パリ五輪で悔しい思いをされて、「さらに高みを目指したい」、「世界一になりたい」と話をされていた。そこに向かって良い形で進めていますか。
「そうですね。でも一旦、次はアジア。まず勝たなければワールドカップも行けないんで。まずはそこに向けてって感じはありますし、さらにやっぱり個人個人成長していかないといけないのかなと思います」
――昨年2024年末に、23年度のアジアの最優秀選手に選出されました。2025年ももう終わりますが、どんな1年になりましたか。
「『フットボールを知れた』というか。今まで自分が持っていたサッカー感みたいのがかなり変わったと思いますし、より戦術的にというか、頭を使っていて。周りを見て、『こういうプレーをしたらうまくいく』みたいなものが整理できてといういう感じはありますね。“頭の中がクリアになった”というか、出すべきもの、行くべきところっていうのがよりハッキリしたなっていうのは感じますね」
――イングランドに来てから1年半が経過して、自信がついて、前よりもご自身ができることがわかってきたのでしょうか。
「うん、そうですね。実際に今の世界のトップレベルっていうのを日々目の当たりにして、そのチャンピオンズリーグで優勝したアーセナルとも試合しますし。EUROで優勝したイングランド代表の選手たちと日々試合をしていたり。そういう環境の中にいて、やっぱり日本はもっともっと上にいけると思うし、行かなきゃいけないし。そのために自分がどう成長していくべきかっていうのがはっきりわかったし。やっぱり、目標がよりクリアになったからこそ、(ワールドカップのタイトル)取りたいなっていう思いも強くなりました。
――2027年のブラジルワールドカップの前年になる来年、どのような年にしたいですか。
「まずはアジアで優勝することで、しっかりワールドカップの切符を掴むっていうのが1番です。まだまだ成長していかなきゃいけないし、自分自身、1対1の部分であったり、戦術面の部分であったり、もっとできるプレーの幅を増やしていくことが必要なのかなと風に思います。(記者:フィニッシュワークがさらに向上したように映るが?)いや、まだまだ。自分のここだけは決めるみたいな角度というものをもっと増やしていかないといけないなっていうのは感じますし。やはり自分の武器みたいなものをどんどん増やしていきたいなと思います!」
――お忙しいなか、ありがとうございました。
「ありがとうございました」
インタビュアー・文●松澤浩三
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