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富山の「あわすのスキー場」は、「日本一優しいスキー場」だ

日本一優しいスキー場に

広々とした緩斜面ながら誰も滑っていない…笑

あわすのスキー場のコンセプトは、「日本一優しいスキー場」だ。ボトムには広い緩斜面が広がりゲレンデも優しいが、スタッフも優しい。スタッフは、お客さんを怒ってはいけないという厳格なルールがあるという。

「初心者に最適なスキー場をめざしているんです。初めて「雪マジ」※を使ってスノーボードやスキーをする20歳前後の学生たちがたくさん来るのですが、レンタルブーツを快適に履かせるところまでスタッフが丁寧に対応します。足の甲が当たって痛いとか、 1回目のスキーで苦痛を感じたら、その人は二度と板を履かなくなるでしょう。初めてやるとき快適か苦痛かで、その人の先が決まってきますからね」
 
リフトの乗り方やゲレンデでの休憩で、怒ったり、注意することはないという。彼ら、彼女は、右も左もわからないだけ。だからやさしく教えるのみだ。

※雪マジ……リクルート社が提供する「マジ☆部」プロジェクトの一環で、19歳から22歳までの若者を対象に、全国約130か所のスキー場のリフト券が無料または割引になるサービス

雪マジの学生たちの集合写真を自らのスマホで撮影する松井さん。彼らに共有したあとは、彼らの許可を得て、インスタグラムなどのSNSにアップする。それを見たお客さんがまたやってくる

楽しい思い出のある場所を失いたくない

第一ペアリフト乗り場は、地元ジュニアの皆さんで賑わっていた。彼らの記憶と体験が、将来のあわすの存続につながっている

たまたま取材した日は、ジュニアのスキーの練習があった。彼らが10年後、20年後もここへ通ってくれることを松井さんは心から願っている。

「こんなメッセージがいっぱい届きます。『私は今、東京で暮らしています。そちらにお世話になったのは、もう 50年も前でしょうか。思い出の場所がなくなるのは寂しいので、協力させていただきます。』今日、滑っていた子どもたちも、何十年後かにまた存続の危機が来たとき、そう思うはずです。思い出の場所にまた戻ってくる。そのサイクルが大事で、少子化なら余計にそうでしょう。雪遊びを始めた場所が残り続けることは業界にとっても、地域にとっても大切なことです」

NPOの会員数を増やすことが、継続の鍵になってくると松井さんはいう。四季を通じた「あわすのファン」を取り込んで会費収入が安定すれば、冬に雪が降らなかったとしても経営ができなくなる心配はない。今後はスキー以外でも、一年を通してどういった取り組みができるか、模索しているところだ。

「産業は、いかにそこを踏ませるかという入り口が大事。だからグリーンシーズンも営業するんです。正直、儲かりませんが、冬の新しいお客さんを呼び込むプロモーションを兼ねたグリーンシーズンの活性化です。

スキー場って冬しかニュースにならないんです。だけど、夏も営業していれば、地元局や地元紙が取り上げてくれて、一年中あわすの、あわすのって見聞きしたら、じゃあ冬になったら一回行ってみようかってなります。そのおかげか、今季の集客は昨対で200%以上だと思います。営業開始一ヵ月ちょいで確保していたお米がなくなりましたから」

リフト支柱もハッピー!
松井さんもハッピースマイル!


地元活性化のために人生の大きな舵を切り、一肌脱いだ松井さんの夢は、なんだろう。

「僕の夢は、再びサラリーマンに戻ることです。それが実現するのは、ここの再建が成功したときです。スキー場を地域のにぎわいの拠点として発展させ、粟巣野に住みたいと思ってもらえるような魅力のあるところにしていきたいですね」

地元民、NPO会員、みんなに支えられながら、コンパクトにコストを抑えつつ知恵を絞って、新しいこと、楽しいことを取り入れて、臨機応変にいまなお成長していくスキー場。これからの日本において、小さいスキー場が健全なパブリックスペースとして存続していく理想系が、ここ粟巣野にあるような気がした。

今シーズンは12月13日(土)にオープン済み。ちなみに、今シーズンも「日本一薄暗いナイター」と打ち上げ花火(立山山麓ゆきまつり)を、バレンタインの夜、2026年2月14日(土)に同時開催する予定だ。ぜひ訪れてみては。

photo:小野塚大悟

Information

あわすのスキー場
〒930-1451  富山市本宮字薄波割1868番地
公式サイト:https://awasuno.com/winter

配信元: STEEP

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