「ストリートカルチャーは特定の都市に閉じたものじゃなくて、人の移動や文化的なつながりで育ってきた」
—— 今回の展覧会のテーマに「異なる場所をつなぐ表現」とありますが、それはどういった意図なのでしょう?
松下 ストリートカルチャーやカウンターカルチャーの基本的な思想として、ローカルな文化が結びつくことを重視しています。金沢から能登への繋がりをどう作るか。ただ半島を題材にすればいいわけじゃなく、自分たちなりの方法で関係を表す必要があると思いました。だから「Living road, Living space|生きている道、生きるための場所」という企画にしたんです。土地に根ざしたテーマに取り組むのはこれまでもやってきたことです。横浜では都市、東京では歴史やストリート。背景には東日本大震災があります。東京と他地域とのつながりを考えることは、SIDE COREの活動に一貫して流れています。ストリートカルチャーは特定の都市に閉じたものじゃなくて、人の移動や文化的なつながりで育ってきた。ウッドストックやサーフカルチャーもそう。移動とともに発展してきた文化をどう表現できるかを考えています。
西広 あと、ひとりじゃないからっていうのもあるかもしれないですね。誰かがあっちに行こうと言ってくれると、それに付いて予想外のところに行くみたいなこともあるのが大きいですね。
高須 あとは移動は好きです。私が一番移動したいって言ってるかも。どこか目的地があってそこに行きたいっていうことじゃなくて、つねに移動してる状況にしたいと思っています。
—— 今が準備の佳境だと思うのですが、今回の展示はどんな内容になりますか。
松下 館内の1/3くらいを使って、普段有料になっている展示室を開放して無料ゾーンを広げます。新作で大きなプロジェクトは、移動をテーマにしたロードムービー的な映像作品。過去作も合わせて展示します。それに加えてゲストアーティストも参加します。アメリカ人のアーティスト、スティーブン・ESPO・パワーズ、ストリートスケーターで映像監督の森田貴宏さんにはスケートパークを作ってもらいます。能登に行くきっかけを作ってくれた細野さんにはイベントを企画してもらい、予想できない人との出会いや、予想外の出来事を展示に反映していく予定です。
西広 準備段階からイベントをやって、2018年から細野さんが関わっていたカレー屋さんにも出てもらったり、知り合った人に出演してもらったり。地元の若い世代ともつながってきました。美術館の地下シアターを使った音楽イベントなんかも試みています。



「ただ能登を題材にすればいいわけじゃなく、自分たちなりの方法で関係を表す必要がある」
—— 最後に、展覧会づくりのプロセスで特に大事にしている点を教えてください。
高須 能登とのつながりですね。展示空間の完成度だけじゃなく、人を訪ねて、関係を紡ぎながら進めていくことを大切にしています。
西広 能登には月一回は通ってます。素材を集めたり祭りに参加したり。そういう継続的な関わりが作品にリアリティを与えると思っています。
松下 「移動そのもの」に価値を見ています。目的地に到達することより、その間にある体験や交流が重要なんです。金沢21世紀美術館は観光客も多いけど、旅の中継地点でもある。展覧会もその一部として機能すればと思っています。


(出典/「2nd 2025年12月号 Vol.215」)