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金沢21世紀美術館での個展で注目されるアートチーム「SIDE CORE(サイドコア)」【インタビュー】

「ストリートカルチャーは特定の都市に閉じたものじゃなくて、人の移動や文化的なつながりで育ってきた」

—— 今回の展覧会のテーマに「異なる場所をつなぐ表現」とありますが、それはどういった意図なのでしょう?

松下 ストリートカルチャーやカウンターカルチャーの基本的な思想として、ローカルな文化が結びつくことを重視しています。金沢から能登への繋がりをどう作るか。ただ半島を題材にすればいいわけじゃなく、自分たちなりの方法で関係を表す必要があると思いました。だから「Living road, Living space|生きている道、生きるための場所」という企画にしたんです。土地に根ざしたテーマに取り組むのはこれまでもやってきたことです。横浜では都市、東京では歴史やストリート。背景には東日本大震災があります。東京と他地域とのつながりを考えることは、SIDE COREの活動に一貫して流れています。ストリートカルチャーは特定の都市に閉じたものじゃなくて、人の移動や文化的なつながりで育ってきた。ウッドストックやサーフカルチャーもそう。移動とともに発展してきた文化をどう表現できるかを考えています。

西広 あと、ひとりじゃないからっていうのもあるかもしれないですね。誰かがあっちに行こうと言ってくれると、それに付いて予想外のところに行くみたいなこともあるのが大きいですね。

高須 あとは移動は好きです。私が一番移動したいって言ってるかも。どこか目的地があってそこに行きたいっていうことじゃなくて、つねに移動してる状況にしたいと思っています。

—— 今が準備の佳境だと思うのですが、今回の展示はどんな内容になりますか。

松下 館内の1/3くらいを使って、普段有料になっている展示室を開放して無料ゾーンを広げます。新作で大きなプロジェクトは、移動をテーマにしたロードムービー的な映像作品。過去作も合わせて展示します。それに加えてゲストアーティストも参加します。アメリカ人のアーティスト、スティーブン・ESPO・パワーズ、ストリートスケーターで映像監督の森田貴宏さんにはスケートパークを作ってもらいます。能登に行くきっかけを作ってくれた細野さんにはイベントを企画してもらい、予想できない人との出会いや、予想外の出来事を展示に反映していく予定です。

西広 準備段階からイベントをやって、2018年から細野さんが関わっていたカレー屋さんにも出てもらったり、知り合った人に出演してもらったり。地元の若い世代ともつながってきました。美術館の地下シアターを使った音楽イベントなんかも試みています。

rode work ver. under city(2023)|2018年と2022年の東京の都市や地下空間を、作業服を着たスケートボーダーたちが縦横無尽に駆け抜ける。変化し続ける街をスケートボードを通じて写し出し、人と都市環境の関わり方を再発見することを促す。© SIDE CORE
dream house(2024)|千葉県木更津市で開催された芸術祭のための作品。かつて木更津市にあったメンバーの実家をモデルに、過去に東京湾の都市開発計画のなかで持ち上がった海上都市計画を思わせるマイホームの象徴として小さな家を建てた。Photo by Osamu Nakamura
big letters, small things(2024)|「第8回横浜トリエンナーレ」では、美術館の外壁一面を使って様々な人を巻き込みながら巨大な壁画を描いた。約3ヶ月間の会期中、劇場のように絵が変化し続け、壁がいきいきとメッセージを発信した。© SIDE CORE

「ただ能登を題材にすればいいわけじゃなく、自分たちなりの方法で関係を表す必要がある」

—— 最後に、展覧会づくりのプロセスで特に大事にしている点を教えてください。

高須 能登とのつながりですね。展示空間の完成度だけじゃなく、人を訪ねて、関係を紡ぎながら進めていくことを大切にしています。

西広 能登には月一回は通ってます。素材を集めたり祭りに参加したり。そういう継続的な関わりが作品にリアリティを与えると思っています。

松下 「移動そのもの」に価値を見ています。目的地に到達することより、その間にある体験や交流が重要なんです。金沢21世紀美術館は観光客も多いけど、旅の中継地点でもある。展覧会もその一部として機能すればと思っています。

道路工事で使用し不要になった看板をもらってきて加工した、制作中の新作。ストリートカルチャーの視点から街を切り取るSIDE COREらしい作品
2012年より活動を開始、東京都を拠点に活動。メンバーは高須咲恵(中)、松下徹(左)、西広太志(右)。映像ディレクターは播本和宜。個人がいかに都市や公共空間のなかでメッセージを発するかという問いのもと、ストリートカルチャーの思想や歴史などを参照し、ときに他ジャンルの表現者を交えたプロジェクトとして作品を展開。10月18日〜26年3月15日まで、金沢21世紀美術館で個展を開催

(出典/「2nd 2025年12月号 Vol.215」)

配信元: Dig-it

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