去る12月6日、沖縄本島南東の公海上空で警戒監視中だった自衛隊機に向け、中国軍の戦闘機が断続的にレーダー照射を行った。高市総理の「台湾有事発言」以来、日中間の緊張は高まるばかり。よもや「日本有事」とも叫ばれる中、日本はいかにしてかの国の脅威と対峙すべきなのだろうか─。
前参議院議員で元自衛官、「ヒゲの隊長」こと佐藤正久氏が言う。
「自衛隊の戦闘機がスクランブル(警告のための緊急発進)で飛ぶ際、正当防衛、緊急避難以外はみずから撃てません。だから自分がやられた場合に対応するため僚機を伴って2機で行く。ある意味で非人道的な任務が対領空侵犯措置で、パイロットは本当に命がけでやっているのです。それに対して断続的にレーダーでミサイル発射のロックオンをするというのは通常ありえません。今回は間違いなく習近平の指示、了解のもとであり、今までよりも極めて緊張感のレベルが高い悪質な行為と言わざるを得ない」
今回のレーダー照射は“一触即発”の緊急事態だったということである。台湾有事は想像以上に、間近に迫っているのかもしれない。
そこには、中国の習近平国家主席の焦りが見え隠れしているようだ。
「中華民族の偉大な復興」をスローガンとして掲げる習主席は、台湾統一を“民族の悲願”として、2013年3月の国家主席就任以来、軍拡を進めてきた。
「クーデターでも起こらない限り国家主席の座が安泰の習近平は27年からの4期目も間違いない。ところが、改めて『台湾統一』に言及した3期目はあと1年ちょっとしかなく、まだ成果が出ていませんからね」(佐藤氏)
場合によっては、来年にも危機が迫っているということなのか─。
今年2月に英国「フィナンシャル・タイムズ」のスクープで明らかとなった、北京市西部に建設中の巨大軍事施設は、台湾統一の布石の1つだと考えられている。その広さは米国防総省の10倍超だという。
元防衛省・自衛隊の情報分析官で軍事・情報戦略研究所の西村金一氏が解説する。
「現代の戦争において、従来の陸・海・空軍に加えて、宇宙・サイバー・AIなどの新領域の部隊とも横断的に連携して、複合的に作戦を実行できるか否かが戦局を大きく左右します。歴史的に見ると陸軍が組織の中核を担ってきた中国人民解放軍では、各々の軍がそれぞれに独断で機能する縦割り構造の傾向が強かった。建設中の巨大軍事施設は、効率的かつ横断的に作戦を実行するための統合作戦司令部的な拠点を担うことを目的にしたものだと考えられます。また台湾への武力侵攻後、米軍による報復攻撃が行われる中で、作戦を継続・遂行するためのシェルターとして機能することも想定できる。さらに中国は、地上部隊を台湾に上陸させるため、約3万人の兵士や戦車を一度に輸送できる大型揚陸艦なども大量に建造しています」
まるで、戦闘態勢は準備万端といった趣のようである。

