テニス競技はメンタルによって大きく結果が左右されるスポーツです。しかし、メンタルを強化したいけれど「なんか大変そうだ」と敬遠している人はいないでしょうか。
本シリーズでは一般プレーヤーに向けて、伊達公子氏や浅越しのぶ氏といった日本テニス界をけん引したトップ選手の指導経験を持つメンタルアドバイザー椙棟紀男氏に、簡単に身に付くメンタルの強化方法を伝授してもらいます。
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学力テストやIQテストなど、点数や目に見える形の能力を「認知能力」といいます。いわゆる勉強ができるか、できないかが基準となり、大学進学への道が決まってきます。
一方、物事に対する考え方や取り組む姿勢や行動など、日常生活、社会活動において必要とされる能力を非認知能力(EQ)といい、最近では幼児期から学童期にかけての取り組みが重要と言われています。具体的には、自分で目標を決めて取り組める。何事にも興味を持ち、粘り強さがある。優しくて相手のことから考えられるといった能力です。
ところで今から30年ほど前、ダニエル・ゴールマン著『EQこころの知能指数』を読んだ時に感動したのを覚えています。組織活性化(業績)の75%は「EQ=気働き」で決まる。また、EQがなければ、ポストを与えられても真のリーダーにはなれない。と書かれてありました。
当時の私の考え方の1つに、スポーツ界でも「EQ=現場の知恵」と「IQ=裏付けの知識」が必要であると指導者の方によく話をしていました。いくら知識があっても、試合で知恵(アイディア)が出てこない場合があります。アイディアは多くの失敗と成功体験から生まれてきます。テニスのプレーにも言えますが、正しい物の見方と疑問を持ち、しつこく問題を追求することで、突然アイディアが湧いてくるように思います。
当時のプレジデント誌に“EQの成果を挙げる『7つの行動習慣』”という記事が載っていました。その中から3つ抜粋して紹介しましょう。
①学習能力が高い[好奇心が旺盛で、どんな状況でも諦めない]
②コミュニケーション能力が高い[周りの人の感情を的確に読み取れる。自分の感情を相手がなるほどと思える形で表現できる。自分と周りの人の感情を調整して、うまく方向付けをする]
③パッションがある[明確なビジョンを描き、ゴールまでのプロセスを上手に設定する。周りの人をうまく巻き込む]とあります。
学力(IQ)が高いのはその人の努力の結果です。それに加えて予測する力と他者を思いやる心(EQ)があればいいですね。
構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2025年3月号から抜粋・再編集
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