最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
ゲイだと言い出せず、中1で酒に逃げアルコール依存症になったひきこもり男性「苦しんだ自分に意味はあった」と思えた出会い【2025 ルポ・ひきこもりからの脱出記事 5位】

ゲイだと言い出せず、中1で酒に逃げアルコール依存症になったひきこもり男性「苦しんだ自分に意味はあった」と思えた出会い【2025 ルポ・ひきこもりからの脱出記事 5位】

見返してやると難関試験に挑んだが……

AAの仲間に「実家にいるのは危ない」と言われ、一人暮らしを始めた。働けなかったので、主治医に相談して生活保護を受給。生活が落ち着くと恋人ができた。

「彼とはインターネットの出会い系で知り合って、2年ぐらいつき合ったのかな。やさしくて機転が利いて、私とは逆のタイプでした。彼に直接何か言われたわけじゃないけど、たぶん彼が看護師さんとしてバリバリ働いている姿を見て、自分も就職しなきゃと思った気がします」

業界紙の求人に応募すると採用された。文章を書く仕事は自分に合っていると感じたが、仕事が終わるのは夜遅い。AAのミーティングに行けなくなるのが嫌で、2か月で辞職した。彼とも会う時間が減り、別れることに――。

見かねた父親に「うちで働かないか」と言われた。測量関係の仕事をしている父親は自分で事務所を構えている。

「世の中に出てみると、自分はかなり遅れを取っているのがわかりました。父のもとで働きながら難関資格を取って見返してやろうと思ったけど、全然、うまく行かなくて……。

後から事務所に入ってきた弟の方が仕事はできるし、資格も全部取っちゃうし。で、やる気がなくなって、だんだん朝起きられなくなって。不登校のときとそっくり」

その後、就職したが、長続きせず転職を繰り返した。

「親に認められたいとか、周りに評価されて安定したいという思いでやってきたけど、自分はそういう仕事に興味を持っていなかったんだと、やってみて気づいたんです」

苦しみの体験を恵みに変えられた

そうして、キリスト教の神学校に入ったのは33歳のときだ。もともとAAを広めたのが神父ということもあり、教会には親しみを感じていた。大きな教会の近くを通りかかり礼拝に出てみたら、「ホッとするような懐かしい感じ」がして洗礼を受けたのだという。

「学校に行けない子が教会に息抜きに来ていたりして、共感できる部分があって。自分の体験も役立てるかなって思いが芽生えたんです」

だが、礼拝で出されたワインを「1口なら大丈夫」と飲んでしまい、9年間おさまっていたアルコール依存症が再燃。記憶を失うまで飲むようになってしまう。挫折しかけた森野さんを救ってくれたのは、またしてもAAだった。再びミーティングに通い始めて断酒。それ以来、6年間、酒は一滴も飲んでいない。卒業後は教会関係の仕事に就いた。

今は仕事の合間を縫って、HA(ひきこもりアノニマス)という自助グループの活動に力を入れている。AAで回復した経験を生かして、ひきこもりの支援をしたいと2010年に仲間と立ち上げたのだ。毎週、ミーティングや依存症回復プログラムの12ステップを行ない、生きづらさや苦しみの軽減を目指す。

「ひきこもっていたときは、なんであそこまで思い詰めていたのかなって、今は思います。もう少し、うまく学校に戻れたら、普通の青春を味わえたんじゃないかなと思うときもあります。そういう話も、ひきこもりという共通の体験をしている人同士の方がより深く語り合えるし、共感も得られるので。

今まで苦しんだけど、普通はたどれない道を歩んだおかげで、巡り巡ってHAもできたし、何でも話せる仲間にも出会えたので、よかったなと。苦しみの体験を恵みに変えられたんですね」

充実した様子に、「自分の人生に悔いはない?」と聞くと、「まだ言い切れはしないかな」と本音をもらす。

「なんでだろう。たぶん、人生が終わる日まで悩むんでしょうね。ここまで徹底的に掘り下げてくださって、ありがとうございます」

最後に感謝の言葉を口にして、急ぎ足で去って行った。

〈前編はこちら『「拒否児」と呼ばれた45歳ひきこもり男性の誰にも言えなかった秘密』〉

取材・文/萩原絹代

提供元

プロフィール画像

集英社オンライン

雑誌、漫画、書籍など数多くのエンタテインメントを生み出してきた集英社が、これまでに培った知的・人的アセットをフル活用して送るウェブニュースメディア。暮らしや心を豊かにする読みものや知的探求心に応えるアカデミックなコラムから、集英社の大ヒット作の舞台裏や最新ニュースなど、バラエティ豊かな記事を配信。

あなたにおすすめ