
この日は、『とれ!』の完成を記念して、コウイチ監督の作品、短編映画『消えない』、ショートドラマ『バニーキッチン』(全30話)、そして本作を一挙3本立てにて上映する『コウイチ映画祭り』が開催された。
本作は、怖くて、少し笑って、爽やかな、神様+心霊=新感覚の青春ホラー映画。企画の始まりについてコウイチ監督は「ホラー映画を作ってほしいと言われました。幽霊が出るけれど、普通の幽霊ではなく、上位の神様のような幽霊を設定したいというお話でした」と振り返る。10回ほど改稿したとプロット作りを振り返り、「最初は十二支とかの話になる予定だったけれど、予算的に厳しいものがあり…」と苦笑いのコウイチ監督。「一体に絞って、神様にしました」と神様が重要な役どころになった経緯を明かしたコウイチ監督は「神様を怖いものにしよう!ではなく、神様に取り憑かれた主人公が、取り憑かれてからどうなっていくのか。ホラーだけど、主人公の美咲の成長の物語を軸にしようというのを目指してこのプロットになりました」と詳細を説明した。

短編の時との意識の違いについて、「YouTubeの動画や短編は1個のアイデアでいけるけれど、長編はそういうわけにはいかない」と話すコウイチ監督。長編では感情の流れや起伏が必要だと語ったコウイチ監督は「本で読みました(笑)。幅広い層に楽しんでほしいというのがあったので、脚本術みたいなものを読んで、分かりやすくみたいなところは意識しました」と長編を制作にあたり、本を読んで勉強したことなども明かしていた。尺については「迷ったし、悩んだけれど…」と素直に話したコウイチ監督は「60分のドラマを1本、そこにプラス30分で作ろうと。霊を取り祓うまでの物語が60分、美咲と母親の話で30分。そこからぎゅっとなって、今の70分ほどの尺になりました」と解説していた。
劇中で描かれる神様について、「田舎道を走っていると、誰がお参りするんだろう?みたいな神社がある」とし、そういった場所に一人でお参りに行ったら、きっとその一人に神様が集中して取り憑くのではと思ったというコウイチ監督。「取り憑いた相手をいい方向に導いていこうとはするけれど、(神様が)人間の価値観とは違う価値観として動いたら面白いのかな、みたいに思いました」と説明したコウイチ監督は「神様には怖がらせようみたいな気持ちはない。ただいるだけ」とし、そういった状況は割とリアルとも思い、いろいろシミュレーションしていったとも付け加えていた。

また、このイベントをもってコウイチ監督がカフェの店員役で出演していることも解禁となった。演者としてのコウイチ監督について中島とまいきちが、カップの配置などをかなり気にしていたことを暴露。さらに(カップを)ガタガタさせていたこと、何度も飲み物を提供するシーンを練習していたことも立て続けに暴露されコウイチ監督は苦笑い。会場にも笑い声が広がっていた。
今年、話題作への出演が続いた中島は、本作が長編映画単独初主演となる。「初主演というよりもまいきちちゃんとがんばろう!という気持ちでいました」とニコニコ。現場では役名で呼び合っていたという中島とまいきちは、すぐに仲良くなれたという。待ち時間もずっとおしゃべりを楽しんでいたそうで「話しすぎて、待ち時間がなかった感じです(笑)」と顔を見合わせていた。

まいきちはオーディションで皐月役に決まったという。「(劇中の)塩を撒くシーンがまんまオーディションでやったところ」と笑顔で振り返るまいきち。「塩の撒き方が素晴らしかった」と決め手を明かしたコウイチ監督に対し、まいきちは「やる気がありすぎて、マイ塩を持っていきました。それがよかったのかな」とニヤリ。実際に映画でそのシーンを撮影した際には「オーディションでやっているから、やりやすかったです」と自信を滲ませたまいきちは「(いつでもどこでも)塩、撒けます!という感じです!」と断言し、会場の笑いを誘っていた。
現場で怖い現象が起きることはあたったのかとの質問に、コウイチ監督は「皐月のシーンでそこにいない人の声が入ったことがあって…」と話し始める。「私のシーンなのに聞いてない!なんで隠してたの?」とまいきちが反応すると、コウイチ監督は「昼間だったけれど、なんか知らない声が残っていて。消しちゃおうってことになっけれど、もし活かしてやっていたら、ほんとうのホラーになっていたかもしれない」とちょっぴり残念がる一幕もあった。

コウイチ監督は今後やってみたいジャンルについて「今回はライトなホラーを目指したけれど、ガッツリホラーもやってみたいし、逆にコメディ全振りみたいな作品もやりたいし。IMAXみたいなのもいいし、3D映画もいいな…」と願望を語っていた。イベントでは映画のタイトルにちなみ、今年一番ついていた、ラッキーだったエピソードを披露するコーナーも。中島は「キャラクターがランダムに出るやつで、狙っているものがなかなか出てきてくれなくて…」としょんぼりした表情を見せたが、「でも、11月頃に友達からプレゼントしてもらったものでシークレットが出て!」と一転して、大はしゃぎ。「今年の運は使い切った気がします」と話し、満面の笑みを浮かべていた。

イベント終盤には、公開初日の舞台挨拶の開催と神様(予定)の出演があるとも発表され、満席の会場も、登壇者も一緒に大よろこび。大盛り上がりのなか、イベントは幕を閉じた。
取材・文/タナカシノブ
