12月21日、2歳のマイル王決定戦となる朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ、阪神・芝1600m)が行なわれる。
先週の阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)は重賞勝ち馬がゼロというメンバー構成で行なわれたが、今週は4頭の重賞ウイナーが揃う豪華版。そのいずれもが目を引く勝ちっぷりを披露しており、チャンピオン決定戦と呼ぶに相応しい顔ぶれとなった。
勝ち馬を輩出した重賞4レースを比較するなかで、最もレベルが高いのはどれかというのが注目ポイントになるが、本稿では当該コースの2歳レコードとなる1分33秒1を叩き出したデイリー杯2歳ステークス(GⅡ、京都・芝1600m)だと見る。ここからエントリーしてきたタイム差なしでゴールした1着のアドマイヤクワッズ(牡/栗東・友道康夫厩舎)、2着のカヴァレリッツォ(牡/栗東・吉岡辰也厩舎)をクローズアップする。
人気は上り最速の34秒0の末脚で差し切ったアドマイヤクワッズが上回るだろうし、新馬戦でも上り33秒3を記録して勝ち上がっているのだからそれは当然であろう。しかし、デイリー杯のレースを精査すると、アタマ差2着のカヴァレリッツォはそれを上回る内容であることが分かる。スタートでやや後手を踏んだカヴァレリッツォは内を通って位置を押し上げ、最終コーナーで早めに仕掛けて後続のターゲットになっている。それに対してスムーズに後方からレースを進め、直線ではカヴァレリッツォの内から差し込んだアドマイヤクワッズが勝利を挙げている。
これを見るに、カヴァレリッツォのレース運びにかなりのロスがあったうえ、早めに先頭に立ったぶん標的にされるという弱みもあった。それでも最後までアドマイヤクワッズに食い下がった走りと勝負根性には目を見張るものがある。クリスチャン・デムーロ騎手が連続騎乗する今回はカヴァレリッツォに逆転の目があるとみて、ここでは本命に抜てき。アドマイヤクワッズは対抗としたい。 3番手に取り上げたいのは、新潟2歳ステークス(GⅢ、新潟・芝1600m)を圧勝したリアライズシリウス(牡/美浦・手塚貴久厩舎)だ。
同馬は6月の新馬戦(東京・芝1600m)で2着に7馬身(1秒2)差をつけて逃げ切り勝ちを収め、8月末の新潟2歳ステークスに出走。やや出遅れながら押し上げて2番手を追走。直線で追い出されると悠々と差し切って後続を突き放し、4馬身(0秒7)差をつけて連勝を飾った。走破時計はレースレコードに0秒1差と迫る1分33秒4と優秀なもの。加えて、この時の2着であるタイセイボーグは阪神ジュベナイルフィリーズで3着に食い込み、また3着のフェスティバルヒルはファンタジーステークス(GⅢ)で優勝を飾るなど、新潟2歳ステークスがハイレベルな一戦であったことが分かる。持ち時計をかなり短縮しなければならない課題はあるが、一方でまだ目いっぱい追われたことがない状態での圧勝続きというレースぶりにはポテンシャルの高さを感じる。
4番手はサウジアラビアロイヤルカップ(GⅢ、東京・芝1600m)を制したエコロアルバ(牡/美浦・田村康仁厩舎)。7月の新馬戦(新潟・芝1400m)で直線9番手から上り34秒0の末脚で差し切って、2着に2馬身半(0秒4)差を付けて快勝。続くサウジアラビアロイヤルカップでも、直線8番手から上り33秒2の豪脚を繰り出して2着に1馬身半(0秒3)差を付けて見事に連勝を飾った。ちなみにこのとき3着のゾロアストロが東京スポーツ杯2歳ステークス(GⅡ)で勝ち馬のパントルナイーフのアタマ差2着に食い込んでおり、レースレベルの高さも証明している。末脚の鋭さはアドマイヤクワッズと双璧で、展開次第では突き抜けるケースまである。
ここまでが勝ち負けする存在として挙げられ、以下は連下までの争いとしてピックアップしておく。
ダイヤモンドノット(牡/栗東・福永祐一厩舎)は、京王杯2歳ステークス(GⅡ、東京・芝1400m)を2番手から抜け出し、2着に3馬身(0秒5)差を付けて楽勝した。ただしこのレースはラクなペースで先行できた展開の利もあり、また1200mデビューで1400mまでしか距離経験がない点、ここまでですでにキャリア5戦を消化している点が引っ掛かるため、上位人気馬と並ぶまでの評価は難しい。
タガノアラリア(牡/栗東・西園翔太厩舎)は、秋明菊賞(1勝クラス、京都・芝1400m)を快勝。3番手から追走し、上り33秒5の末脚で突き抜け、2着に3馬身(0秒5)の差を付けた。こちらもダイヤモンドノットと同様、1200mデビューで距離経験は1400mまで、またキャリアが5戦という点は割引で、連下までの評価にとどめた。
穴馬として1頭挙げておくならば、コルテオソレイユ(牡/栗東・佐藤悠太厩舎)か。ベゴニア賞(1勝クラス、東京・芝1600m)は上り33秒5と最速の上りを記録したが、出遅れが響いてアタマ差の2着と取りこぼした。ただし初勝利を収めた未勝利戦で阪神の芝1600mコースを経験しているのはプラス材料。五分五分のスタートが切れれば善戦の可能性があると見る。
文●三好達彦
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