「賞レースに出るっていうのは“呼吸”なんでね」
──『M-1グランプリ』王者となったのが2015年。M-1が5年ぶりに復活した年だったので、かなり気合が入ったのでは?
斎藤司(以下、斎藤) 実は、僕らは『THE MANZAI』の方が合ってたんですよ。M-1ほどソリッドにネタの内容を見られる感じじゃないから。もうちょいポップっていうかね。こっちの方が「水が合ってる」なんて話をしていて、実際に結果もついてきた感じだったんです。
斎藤 M-1が復活すると聞いて「マジかよ!」とは思いましたよ。ただ、賞レースに出るっていうのは一応“呼吸”なんでね、芸人にとっては。
たかし 名言が出ました。
斎藤 元々キャラ的に、M-1のような厳かな大会で優勝するタイプじゃないんで。こだわり抜いた漫才というより、どうしてもふざけてる感じがあるので。
──当時、テレビの画面越しからでも、優勝しそうな空気が伝わってきたのを覚えています。
斎藤 やっぱりできることは、1つしかないんですよ。目の前の仏頂面した客を笑わせなきゃいけないっていうね。だから、スタイルが変わることもないんです。
たかし たまにいるよね。「客どんな感じ?」って言ってくるのが。あれ、あんまり意味が分かんない。
──良し悪しは別にして、お笑いが小難しくなってきた感じはありますよね。
斎藤 そうですね。もう方程式みたいになってきちゃって。それに関しては、たかしが言いたいことがあるんですよ。
たかし もう笑わないっすよ、申し訳ないですけど。1年目(の若手)とかNSC(吉本総合芸能学院)の生徒でもちゃんとしてる人が多いし、ルミネの舞台とか立ったら普通にウケるとは思うんです。でも、ハミ出ないんですよね。
斎藤 よくできてるなって、感じですね。例えば、サザンオールスターズの桑田佳祐さんって、オンリーワンじゃないですか。歌のうまさ、曲の良さだけじゃなくて、ハミ出るというのは、そういうところだと思うんです。SNSにも歌がうまい人はいるじゃないですか。でも、普通なんですよ。
──個性がない、と。
たかし つまんないとかじゃなく、「この漫才どうなっちゃうんだろう」みたいなワクワク感がないんです。
──ハミ出てる若手芸人はいませんか?
たかし ハミ出ると劇場で食えないんじゃないかな(笑)。でも、今は配信とかですごい稼ぐ人もいますからね。若手だとイチゴ(お笑いコンビ、NSC24期)は見ててワクワクしますよ。
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──お二人はどういう笑いを目指してますか?
たかし 一番漫才に向き合っていない2人(笑)。
斎藤 とにかく練習が嫌いなんです。練習や打ち合わせでカフェに行っても、頭も回らないしネタも出てこない。だけど舞台上だと、瞬間的に追い詰められたり、即興で振られたりすることで、脳がギュイーンと回る感じがあります。
──アドリブ力がものをいうんですね。いつからハゲネタをやり始めましたか?
斎藤 最初は普通の巧みなコントをやってはみたけど、あんまりウケなくて。ああいうコントって、爆笑がないじゃないですか。うまくいかなくて悩んでいたら、先輩のダイノジさんが「なんでハゲネタやんねぇんだ」と。当時、ダブルハゲのコンビはいませんでしたから。
──そして、'15年のM-1で優勝。決勝は錚々たる面々でした。
斎藤 だから優勝するとは思ってなかったんですよ。敗者復活枠じゃなきゃ優勝してないですよ。決勝に行く自信はあったんですが、準決勝で敗退して。結果的に敗退したことで優勝できたんです。僕らが優勝したせいで、『笑神籤』ができちゃったぐらいですから。
──敗者復活戦を制した勢いのまま、30分後には優勝ですもんね。
斎藤 だから言われましたよ「勢いで取った」とか。そういう意見には一言ですね、「うるせえ」と。
──M-1王者という肩書は大きいですか?
斎藤 もちろん。仕事をもらう上でも、いつでも必ず言われますし、事実は事実なんでね。でも、そのとき必ず決まって「うるせえな、昔のことを言うんじゃねえよ」と。
──カッコイイ! 10年前の話だぜ、と。
斎藤 10年前って言ったら、PHSの時代だから。
たかし え、まだあったの?
斎藤 分かんないけど、10年経ったらだいぶ変わりますよ。
