わずか1~2℃の温度変化でも精子生産は妨害される

この研究により、わずかな温度変化で精子形成に必要な細胞分裂(減数分裂)に異常が起こることが示されました。
正常な精子形成が34℃で問題なく進む一方で、わずか数度上昇して37~38℃になるだけで染色体異常が発生し、精子になる前に細胞死(アポトーシス)を起こしていました。
温度による妨害は他の過程でも起きており、1~2℃高いだけの35~36℃でも丸い精子細胞が尻尾のはえた精子になるための成熟が妨害されました。
これらの結果は、精子形成過程のほぼ全域にわたり高温を避ける必要があることを示します。
研究者たちは、熱による減数分裂の失敗がどのような分子によって引き起こされていくかを調ることができれば、精子形成が低温で起こる根本的な理由や、男性の不妊治療に役立つと述べています。
参考文献
高温で精子が作られないメカニズムの解明に向けて前進
https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei-sentankenkyu/20220525-2
元論文
Temperature sensitivity of DNA double-strand break repair underpins heat-induced meiotic failure in mouse spermatogenesis
https://www.nature.com/articles/s42003-022-03449-y
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

