妙高に吹く外資の嵐もなんのその
シンガポールの外資系ファンドが、妙高高原と斑尾高原のスキー場、リゾート開発に着手したというニュースが、最近スノー界隈を飛び交った。すでに杉ノ原スキー場と斑尾高原スキー場を買収済みで、2026年夏までに着工、2028年末の第1弾完成を目指しているという。
「関温泉も外国人が旅館を買っていますよ。どんどんやってもらったらいいと思いますよ。そのうちね、ブーム終わったらね、二束三文で売っぱらって逃げていきますわ。かつての日本人もそうだったじゃないですか」
自分たちがちゃんと芯を持ってやっていれば、なにも変わらないという自信と信念がのぞく。
「スノーボードしかり、パウダーしかり、外国人しかり、いいもの、楽しいもの、新しいものは積極的に取り込むスタイルは徹底してる。ここだけはしっかりとブレないようにいきたいね」
家族経営なもので……
「おっと、ちょっと待ってね」
事務所の奥にチケット売り場がある。売り場のスタッフが11時で上がったところにお客さんが来たようで、社長自らがチケットを売る。流暢な英語で。

「なんでもするよー。家族経営だもん。お茶入れもするし、便所掃除もやりますよー」
社長の椅子がある事務所の窓からは、リフト乗り場が見える。かつて自分がそうしてもらったように、今度は自分が優しく外国人を迎える番だという。
またしばらく席を立つ。そして、座る。
「悪いね、落ち着かなくて。うちは家族でやっているから、それに尽きますね。おれとお母さんと、長男と長男の嫁さん、長女。あと、長男の嫁さんのお父さんが山頂で見張りをしています。昔はね、家族経営のスキー場っていっぱいあったんですよ。今では大手に吸収されちゃいましたけど、それが生き残っている。うちくらいじゃねえかなあ」

地元を拠点にするガイドや業者らしき人が次々と事務所にやってきては、社長と談話して帰っていく。家みたいだ。
「家族経営を象徴する場所は、中腹にあるレストランですよ。ここの料理はね、種まきから始まるんです。そう、家庭菜園で野菜作りから。ソースなんかもお母さんが自分でハーブを育てて、それを手でペーストにして使っている。手が混んでいるからね、うまいですよ。彼女はレストラン経営が大好きなのね。ぜひ食べていってください」
奥さんの博子さんら地元の女性たちが切り盛りするアットホームな食堂が「レストランタウベ」だ。神奈山第1リフトに乗らないと行けない山腹にあるため、取材班はタウベ目指してリフトに乗ることにした。


