
初対面の人との会話でも、なぜかすぐ打ち解けられる人がいます。
話題が特別に面白いわけでも、饒舌に話しているわけでもないのに、気づけば相手との距離が縮まっている。
その違いは「話し方」ではなく、「聞き方」にあるのかもしれません。
米ノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC)の研究チームは、見知らぬ人同士の会話を分析し、聞き上手な人ほど、初対面でも強い社会的つながりを感じやすいことを明らかにしました。
研究の詳細は2025年11月21日付の学術誌『Communications Psychology』に掲載されています。
目次
- なぜ「聞く力」が人間関係を左右するのか
- 実験で分かった「聞き上手」の具体的な行動
なぜ「聞く力」が人間関係を左右するのか
スマートフォンやメッセージアプリが普及した現代では、他者と深くつながる機会が減り、孤独感や社会的孤立を感じる人が増えていると指摘されています。
研究チームは、こうした背景から「人と人がつながる瞬間に、実際に何が起きているのか」に注目しました。
先行研究を調べる中で、研究者たちが注目したのが相手の発言にどれだけ素早く反応するかという点です。
相手の話に間を置かず返答できるということは、内容をきちんと聞き、理解している可能性が高いと考えられます。
第一著者のテイラー・N・ウェスト(Taylor N. West)氏は「人は相手の話を注意深く聞くことで、会話のリズムや感情に自然と同調できるようになる」と説明しています。
この「同調」こそが、初対面でも安心感や親近感を生み出す鍵だと考えられました。
実験で分かった「聞き上手」の具体的な行動
チームは、646人の成人を対象に、見知らぬ人同士が会話する実験を行いました。
一部の参加者は、より深いつながりを促す質問に沿って会話を行い、別の参加者は特に指示のない雑談をしました。
すべての会話は録画され、専門の評価者が「聞いている行動」を詳細に分析しました。
評価の対象となったのは、相手の発言を肯定する反応や、話を広げるための追加質問などです。
その結果、こうした聞き上手の行動が多い人ほど、会話後に「相手とつながった」と強く感じていたことが分かりました。
特に重要だったのが、「追加の質問をすること」です。
相手の話を受けて質問を返すには、内容を正確に聞き取る必要があります。
研究では、聞き上手な人ほど反応が速く、ポジティブな感情を相手と共有している様子も多く観察されました。
さらに興味深いことに、「他者とつながることを意識するよう指示された参加者」は、聞き方について特別な説明を受けていなくても、自然と追加質問が増えていました。
研究者たちは、人はつながろうとすると、本能的に相手の話をよく聞くようになる可能性を示唆しています。
この研究が示しているのは、社交性や話術が人間関係を決めるわけではないという点です。
相手の話に注意を向け、少し踏み込んで質問をするだけで、初対面の距離は驚くほど縮まります。
聞き上手であることは、生まれつきの性格ではなく、意識次第で誰でも実践できる行動です。
孤独感が社会問題として注目される今、「上手に話す」よりも「丁寧に聞く」ことが、人と人をつなぐ最もシンプルな方法なのかもしれません。
参考文献
Good listeners connect more easily with strangers, study finds
https://phys.org/news/2025-12-good-easily-strangers.html
元論文
High-quality listening behaviors linked to social connection between strangers
https://doi.org/10.1038/s44271-025-00342-2
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

