「恐ろしいのは、彼が今も成長し続けているということだ」
4度のF1王者であるセバスチャン・ベッテルは、2025年に驚異的な追い上げでタイトル争いを演じた、レッドブルの後輩であるマックス・フェ ルスタッペンについて、そう評価した。
2025年シーズンのF1の大半で、レッドブルはマクラーレンに対して戦闘力で劣っていた。にもかかわらず、フェルスタッペンは全ドライバー中最多となる8勝&8ポールポジションを記録した。特筆すべきなのは、第15戦オランダGPでは104ポイント差をつけられていたにもかかわらず、最後はタイトルを獲得したランド・ノリス(マクラーレン)にわずか2ポイント差まで迫ったことだろう。
ベッテルはポッドキャスト番組のBeyond The Gridに登場すると、フェルスタッペンのことを称賛。才能だけではなく努力家であり、なによりも重要な場面での冷静さがあると語った。
「彼が優れていることは誰もが知っているが、彼はまだ成長しているし、ハングリーで、学び続けようとしている」
ベッテルはそう語る。
「舞台裏でも非常に努力していると思うし、それが彼をこれほど強くしている要因だ。もちろん、彼は並外れた才能にも恵まれているが、たとえグリッド上で最も才能あるドライバーのひとりだとしても、最終的に彼を強くしているのは……常にそういった複数の要素の組み合わせなんだ」
「そして決定的な要素は、彼の“頭脳”だ。重要な局面において、彼は冷静さを保ち、ほとんどミスを犯さず、必要なときに結果を出す。プレッシャーを感じていない人間などいないし、誰であってもプレッシャーは感じるものだと思うが、彼はそれを一時的に脇に置き、本当に重要なことに集中できるんだ」
ベッテルはホイール・トゥ・ホイールのバトルにおいてフェルスタッペンが見せる成熟した姿勢にも注目している。
「若い頃、あるいはキャリアの最初の1年目、2年目、3年目、4年目の彼の動きを見れば分かるが、今の振る舞いははるかに成熟している」
「彼はいまでも不可能に見えるギャップに飛び込み、それを可能にしてしまう。これは彼の技量の素晴らしさだ。しかし、重要でない場面では、すべてのギャップで狙っていくわけではない」
「今は必要ないと理解しているからこそだね。追い上げが必要で、オーバーテイクをしなければならない状況では、彼は集団の中を素早く抜けていく点で、おそらく最高のドライバーのひとりだろう。一方で、『まだ時間があるし、今はそこまで重要ではない』と分かっていれば、パニックに陥ることもないというわけだ」
そしてベッテルは2025年のF1王者となったノリスのメンタリティについても、フェルスタッペンとは異なる観点から高く評価している。とりわけ、自身のメンタルヘルスについてオープンに語る姿勢を「勇敢」だと表現した。
「そういったことは完全なタブーだった」とベッテルは現役時代を振り返った。
「『そんなことは話すべきじゃない』という空気があって、誰も口にしなかった。レーシングドライバーは機械のようで、完璧で、ミスをせず、弱さを見せない存在だというイメージがあった。これはモータースポーツに限らず、スポーツ全般に言えることだ。弱さを見せるな、相手に付け入る隙を与えるな、という考え方だ」
「だけど、僕はそれは間違いだと思っている。僕たちは皆人間で、それぞれ問題を抱えている。ランドがF1の内側でも外側でも、ロールモデルとしてそうした姿勢を示しているのは素晴らしいことだし、それが彼の人気の理由でもあると思う」
「もちろん、『彼を脆弱にする』『良くないことだ』と批判する声があるのも分かっている。でも、その意見には断固として反対だ」

