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『メトロイドプライム4 ビヨンド』レビュー:過去作を超える体験を見せてくれた良作

『メトロイドプライム4 ビヨンド』レビュー:過去作を超える体験を見せてくれた良作

今後超えるべき課題と期待したい可能性

ここまで本作の魅力について語ってきたが、その一方で本作には、今後超えるべき課題が明確に存在している。その課題とは、「ビヨンド」な点として挙げた「ソルバレイ」の探索だ。

「ソルバレイ」が、「新たな探索」の楽しさをもたらしたことに間違いない。ただその一方で、「新たな探索」の楽しさがやや中途半端なものになっているようにも感じた。というのも、「ソルバレイ」はオープンワールドほどには広くなく、オープンワールドのような自由な探索要素もさほど多くないからだ。

確かに移動は自由にできる。しかし、パズルを解くために必要な能力を手にしていなければ、探索したところで重要なアイテムが手に入るわけでもない。

このため実際にプレイすると、「広大な空間を自由に探索している」という感覚はあまりなく、むしろ「シナリオの都合でご都合的に移動させられている」という感覚に陥ってしまう。

とは言え、これには理由がある。

オープンワールドゲームが「広大な空間を自由に探索」できるのは、探索要素と、シナリオ的に達成しなければならない目標とが、強く結びついていないためだ。たとえ「探索しない場所」があったとしても、目標は達成可能。だからプレイヤーは、「探索する場所」と「探索しない場所」を自由に決めることができる。

しかし「メトロイドプライム」シリーズの探索は、手に入れたアイテムと目標達成が完全にリンクしている。細い通路に入るためには「モーフボール」が必要だし、硬い壁を破壊するには「ミサイル」が必要……といった具合に。このため、「探索しない場所」があればアイテムは手に入らないし、アイテムが手に入らなければ、シナリオは進行不能になってしまう。

これは、どちらがいい、悪いという話ではない。オープンワールドゲームが「自由に探索することで、自分だけの物語を作り上げる」楽しさを目指しているのに対し、「メトロイドプライム」シリーズは「アイテム入手によって、新たな道が切り開かれる」楽しさを目指している。つまり、スタイルの違いなのだ。

「メトロイドプライム」シリーズの探索設計を前提にすると、「ソルバレイ」で自由な探索を実現するためには、「手に入ったらお得だけど、手に入らなくても進行に支障はない」程度のアイテムしか設置することができない。すると結果的に、探索しても「驚くような発見は少ない」となってしまう。

また本作において「ソルバレイ」は、ダンジョン間を繋ぐハブのような役割を果たしている。このため、オープンワールドゲームのように広大なマップにしてしまうと、移動の手間が増えてしまう。だからこそ、オープンワールドゲームのような広大さは持たせなかったのだろう。

このため、オープンワールドゲームのような「自由な探索」をイメージして「ソルバレイ」をプレイすると楽しさに乏しく、スケール観も小さい……というネガティブな感想を抱くことになってしまう。

ただ見方を変えれば、「ソルバレイ」は、「メトロイドプライム」シリーズの作法を守っているとも言える。オープンワールド的な開放感を持っているが、キッチリ「メトロイドプライム」シリーズの枠の中で成立させているのだ。

それだけに「ソルバレイ」は、人によって「シリーズの感触を守ってくれて嬉しい」となる可能性もあるし、「ただマップが大きいだけで、新作ならではの独自性が低い」と感じる可能性もある。もちろん、「オープンワールドゲーム的な手触りを期待したのに、ガッカリ」と感じる人もいることだろう。なんとも悩ましく、難しいポイントだ。

それでも視点を本作から今後の「メトロイドプライム」シリーズへと移せば、「ソルバレイ」は新たな「探索」の可能性を指し示したとも言える。

自由に移動可能なフィールドを舞台に、「自由な探索」を楽しむというコンセプトは、個人的には悪くないと思う。もちろん、今回はパズルをプレイ可能なタイミングが固定され過ぎているし、自由に体験可能なイベントも少ない。ただもし、より自由度の高い探索が可能になったとしたら……?

もちろん、「自由度の高い『メトロイドプライム』」は、人によっては「認められない」と感じるかもしれない。しかし、上手く調整することができれば、シリーズはより高みへと「ビヨンド」できるのではないだろうか?

そして、本作の未来に明るいものを感じさせてくれるのが前述したサイラックスや銀河連邦兵士の存在だ。「メトロイド」シリーズはサムス・アランの孤独な探索が魅力となっており、仲間とともに戦うというシチュエーションはこれまで少なかった。しかし今回、サイラックスや銀河連邦兵士たちが明確なキャラクター性を持って登場したことで、「メトロイド」の世界観が広がったように思う。

ということは、続編の選択肢もぐっと広がり、作りやすくなった……に違いないのではないだろうか。実際に本作は物語的に、続編を意識しているように感じられる。できれば今後、サイラックス以外のハンターや、今回登場した銀河連邦兵士以外のキャラ、もちろん新たなスペースパイレーツについても登場が期待できるし、より世界観の広がった「メトロイドプライム」作品を出してほしいという期待も大きくなる。

ただ、いくらなんでも8年は長い。なるべくなら、次作「メトロイドプライム5」はもっと早いスパンで出してほしい。

(文/田中一広)

(執筆者: ガジェ通ゲーム班)

配信元: ガジェット通信

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