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賞金1000万円を手に世界へ飛翔! 新鋭の松岡隼と再起を期す西郷里奈が「SBCドリームテニス」を制す<SMASH>

賞金1000万円を手に世界へ飛翔! 新鋭の松岡隼と再起を期す西郷里奈が「SBCドリームテニス」を制す<SMASH>

「来年に向けて、自分の中でワクワクしている」。男子優勝者の20歳、松岡隼はそう言い大きく目じりを下げた。

 25歳の西郷里奈は「優勝賞金は、トレーナーの帯同費用にしたい」と目を輝かせ、17歳の早坂来麗愛は「決勝ではチャンスもあったので、悔しい」と小さく唇を噛む。37歳の瀬間詠里花は、「選手やトレーナーさんら、色んな方たちと話をさせてもらい、悩んでたことが少しクリアになった」と、頬に明るい色を灯した。

 12月20日と21日の2日間にわたり、兵庫県・ブルボンビーンズドームで開催された、湘南美容 Presents『SBCドリームテニスツアー2025』。若手からベテランまで、男女の国内トップ選手が集うこのイベントは、優勝1000万円を懸けた賞金大会。主催者や関係者たちの「日本の選手たちが、世界へ挑むための資金を得てほしい」との思いから、2022年に産声を上げた。

 1年の終わりのこの時期、参戦選手たちは各々のシーズンを終え、来年に向けてそれぞれの決意や思いを胸に抱いている。

 プロ3年目の松岡にとって、今季は1000位で始まりキャリア最高位の360位で終えた、躍進の1年だ。戦いのステージも、ITFツアーからATPチャレンジャーへとジャンプアップ。その戦いの中で「相手のミスを待っていては、ポイントは得られない」ことを痛感し、「もっとリターンで攻撃的に行く」との課題を持ち帰った。
  今回のSBCドリームテニスで、松岡はその課題を克服すべく、リターンゲームで攻めに攻めた。特に相手のセカンドサービスでは、ベースラインから1メートル以上踏み込んで打ち返す。

 もちろん、ミスになる局面もあった。ただ松岡は今より上に行くべく、相手のサービスに立ち向かい続ける。準決勝の綿貫陽介戦でも、超攻撃リターンでコートを支配。そして決勝では白石光をストレートで下した。優勝賞金1000万円は、未来を見据えていたからこそ、その手につかめた戦果だ。

 女子優勝者の西郷にとっても、今季はキャリア最高の300位で終えた充実の1年。ただその始まりは、ケガとの戦いだった。1月上旬に、足首の疲労骨折が判明。2カ月ほど、ツアー離脱を余儀なくされた。

 ただ足が動かせぬその期間、西郷はジムに通い上半身の強化に努めたという。そして、いざ復帰して試合に出ると、相手の強打にも打ち負けぬ自分に気が付いた。5月には韓国のITF W35で優勝し、自信も深める。ただ同時に、連戦が続くと身体のそこかしこに痛みも出た。「トレーナーを帯同したい」との思いを一層強めた背景には、そのような経緯がある。

 今大会は、ボールを打つ感覚そのものは、あまり良くなかったという。だからこそ、目の前の1球1球に集中した。決勝では、立ち上がりは17歳の相手の若さと勢いに押されたが、スコアは気にせず目の前のボールに全力投球。最終ゲームに入った時は「勝ったら1000万円だと意識してしまった」と苦く笑うが、震える手でラケットを振り抜き、最後の1ポイントをもぎ取った。
  決勝で西郷に敗れた早坂は、仙台育英高校の2年生。高校タイトルはことごとく手にしているが、プロの大会に出るのは今回が初めての経験だ。そのため、コート外では「めちゃめちゃ緊張してます」と囁き肩をすくめていた17歳が、試合になると人が変わったかのように躍動。172センチの長身から叩き下ろすサービスとフォアハンドがコートに突き刺さり、そのたびに観客から「おおっ!」と感嘆の声が上がった。

 早坂が「相手の方が緊張しているはず」との確信を得て試合に挑めていたのは、自身が高校テニス界でトップに立ち、追われる立場にいるから。今大会では挑戦者である強みを生かし、強気のプレーで日比野菜緒や秋田史帆ら上位勢からも金星を得た。

 決勝でも序盤は雄大なプレーをコートに描き、ゲームカウント3-0とリード。ただそこから「勝利を意識してしまった」ことを認める。今大会は1セット4ゲーム先取制、ノーアドバンテージのスピード決戦。少しの気の緩みから反転した流れを、再び変えるのは困難だ。試合終盤で追い上げる奮闘も見せるが、一歩届かず。

「大切なポイントでは、西郷さんがプレーのレベルを上げてきた」と、相手の経験と地力を素直に認めた。

 来年にはプロ登録することを視野に入れる早坂は、「プロの方と試合できたり、普段は会うことのない関係者の方たちとお話もさせてもらえて、勉強になった」と相好を崩す。経験に人脈、そして自信。17歳の大器は両手いっぱいにお土産を抱えて、郷里に戻ったはずだ。
  西郷に準決勝で敗れた瀬間は、参戦選手中、最年長。今季は一時600位台後半までランキングを落とし、「このままで良いのかな」と悩みもしたと打ち明けた。4月からは拠点を、神尾米氏らが率いる『Team Rise』に移す。若手や上位選手たちが集う環境で刺激を得たが、同時に、周囲の期待の目が新鋭に向く寂しさも感じたという。

 それら葛藤も抱いて今大会の会場を訪れた時、かつての盟友ら多くのよく知る顔に会い、そして悩みを打ち明けもしたいという。同世代の片山翔には、「緊張したり上達したい気持ちがあるなら、それを大切にすればいいんじゃない?」と言ってもらえた。グランドスラムの大舞台を知る日比野菜緒からは、共感とモチベーションを得た。綿貫陽介のトレーナーの長田光生氏に「最近少しフィジカルがキツイ」と相談したところ、良いアドバイスをもらえたという。

「この大会でなければ、最近はなかなか交わることのない人たち。大会を開催してくれた方々には本当に感謝しています」

 そう言って瀬間は笑った。

 各々の選手が、それぞれ欲していたものを手に、早くも新たなシーズンに向け歩み始めている。

取材・文●内田暁

【動画】SBCドリームテニスツアー2025、男女それぞれの優勝決定シーン!

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配信元: THE DIGEST

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