2026年ミラノ・コルティナ五輪の日本代表最終選考会を兼ねたフィギュアスケート全日本選手権(東京・代々木第一体育館)は12月21日に終了した。2019、20年の全日本女王・紀平梨花は西山真瑚とカップルを組み、アイスダンスとして3シーズンに大舞台に帰ってきた。新星カップルの全日本初陣は4位と健闘したが、フリーダンス終了後には悔し涙を流した。
リズムダンス3位で折り返した“りかしん”のフリー曲は『もののけ姫』。重厚なメロディーから息のあったステップ、ツイズルでプログラムの世界観を表現。中盤のローテーショナルリフトで紀平が踏み切る前にバランスを崩すミスはあったものの、最後まで落ち着いて滑り切った。
結成から2か月半、若いカップルが熱演したジブリの名作に会場は大きな拍手で称えた。得点は86.97点、リズムダンスとの合計144.41点でともに自己ベストを更新。全日本の予選会だった11月の西日本選手権よりもスコアを伸ばし、2人は確かな成長を示した。
だがキスアンドクライで得点を待っている間、紀平の目からは涙がこぼれ表情は最後まで暗かった。取材対応のためミックスゾーンに現れた紀平は「めちゃくちゃ申し訳なくて...私のところで失敗してしまった」と声が震えた。「練習でも普段しないようなミス」だと話すと、再び涙がこぼれた。「一人じゃないからこそ、一緒に頑張ってきたことが分かっているから、すごく悔しい。ごめんしかないみたいな気持ち」と視線を落とした。
隣で紀平の言葉を受けた西山は「まず2か月半で全日本の舞台に立って、表彰台を争えること自体がすごく奇跡」と寄り添う。「(ブランクから)ここまで持ってきた梨花ちゃんは本当にすごい。涙を流すほどアイスダンスや全日本に向けて懸けている裏返しだと思う」と慰めた。「本当は悔し涙じゃくて嬉し涙を流させてあげたかったですけど、梨花ちゃんがアイスダンスを頑張ろうと思っていることが僕は嬉しい。絶対に次は嬉し涙を流させてあげたい」と言葉に力を込め、前を向いた。
パートナーの優しさに触れた紀平は「これからミスなく滑れるように。短い期間でもここまで成長はできたので、猛スピードでたくさん練習していきたい」と決意を新たにする。「私はまだブランク明けなのでもっとトレーニングして、アイスダンスの技術をしっかり身につけることができれば見違えるほどのカップルになれると思う。目指すべきところは一番上。突っ走りたい」と来年の全日本では頂点を目標に掲げた。
紀平にとっては3シーズンぶりの帰還となった全日本。シングル時代にはなかった嬉しいことは2倍に、辛いことや悔しいことは半分に分かち合えるカップル競技の魅力を肌で感じた元全日本女王は、悔し涙を糧にさらなる進化をこの日誓った。
取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)
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【画像】新カップル“りかしん”こと紀平梨花/西山真瑚組が全日本アイスダンスで華麗に舞う!

