アメリカの連邦最高裁判所で「トランプ関税」が合法か否かの判断が間もなく出る。アメリカの一部メディアは、トランプ政権が敗訴する可能性があると報じた。その場合、世界経済が大混乱に陥る危機が指摘されている。
アメリカのメディア関係者が解説する。
「トランプ関税は主に2つの要素からなっています。ひとつはIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税引き上げ。IEEPAは『外国がアメリカ製品に高関税を課している場合、アメリカも同等の関税を課すことができる』としています。もうひとつが、自動車などにかかっている通商拡大法232条『国家安全保障上の観点』から発動できるもの。今回争われているのはひとつめです」
そもそもは、カリフォルニア州の司法長官や民間企業が「トランプ関税は違憲」として提訴したのが発端だ。提訴を受けて、まず貿易裁判所が今年5月に、違法の判断を下した。その後、トランプ政権は控訴するが、8月に控訴裁判所が違憲と判断。トランプ政権はアメリカ連邦最高裁判所に上訴し、これが審議されている。先のメディア関係者が言う。
「最高裁の判事は9人ですが、トランプの策略で一部差し替えられ、6人が共和党派となりました。これにより、関税判定はトランプの勝ちとみられました。ところがその後、口頭弁論が行われると保守派の数人が違憲に傾き、最終的にはどちらが勝つか、混沌としてきたのです」
その最高裁の結論が、12月末あるいは1月に出るという。
では、こうした司法の動きに対し、トランプ大統領サイドはどんな動きをしているのか。シンクタンク研究員が明かす。
「トランプ大統領は『われわれは大きな勝利を収める』と自信を覗かせています。トランプ関税によってアメリカに入った税収は約30兆円だと喧伝し、この中からアメリカ国民ひとりひとりに日本円で約30万円を還元すると表明。国民の支持回復に、躍起になっています。『この訴訟に勝てなければ、わが国は極めて大きな苦難に直面する』と述べ、間接的に最高裁判所に猛烈なプレッシャーをかけています」
一方で、もし負けた場合の対策には余念がないと、このシンクタンク研究員は言うのだ。
「違憲なら新たに『特定国がアメリカに不利益をもたらす差別が認定された場合、大統領はその国に最大50%の追加関税を課せられる』関税法338条に切り替え、あくまで『トランプ関税』を貫き通そうとしています。しかし敗訴で厄介なのは、ようやく落ち着いた各国のトランプ関税がやり直し、再交渉となること。その間、世界経済は再び不安定となり、大混乱に陥ります」
日本への影響について、金融アナリストはこう指摘した。
「関税再交渉は厄介ですが、問題はアメリカに約束した約80兆円の投資です。敗訴でもトランプは『80兆円は別だ』として、その履行をゴリ押ししてくる可能性は高い。関税が違法とされたならば、即実績となって国民に猛アピールできるものが欲しいからです」
その80兆円に加え、もうひとつ日本を脅かすものがある。日銀が12月19日に政策金利を0.75%に引き上げた理由のひとつは「アメリカ関税政策が国内外の経済に与える懸念が後退した」こと。トランプ敗訴なら再び、日本経済は不透明の大海に投げ出される。
(田村建光)

