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学生の想いが街を走り出す 西武文理大学が手がけた“世界に1台だけのトラックラッピングアート”

街を走るトラックは、ただ荷物を運ぶだけの存在でしょうか。
もしそこに、若い世代の想いや地域へのメッセージが込められていたら、見え方は少し変わるかもしれません。

埼玉県にキャンパスを構える西武文理大学では、学生たちが中心となり、企業や地域と連携しながら「世界に1台だけのトラックラッピングアート」を制作しました。完成したトラックは、鮮やかなデザインとともに、運送業界や地域社会への前向きな想いを乗せて走り出しています。

この取り組みが特徴的なのは、単なるデザイン制作にとどまらず、学生自身が社会課題や業界のイメージについて考え、どんな表現なら多くの人に届くのかを試行錯誤してきた点です。プロジェクトの過程では、企業担当者や金融機関とも意見を交わしながら、企画から表現までを一つひとつ形にしてきました。

完成披露会当日には、学生たちがこれまで積み重ねてきた時間や想いが、トラックという「走るキャンバス」として披露されました。そこには、地域を大切にしたい気持ちや、働く人への敬意、そして未来への希望が、静かに、しかし確かに表現されていました。

学生の学びと社会が交わることで生まれた、この産学連携プロジェクト。
トラックラッピングという少し意外な手法から見えてきた、新しい地域との関わり方に注目してみます。

学生の想いから生まれた「走るアート」という発想

街を走るトラックを、ただの輸送手段としてではなく「想いを届ける存在」として捉え直す。
今回のトラックラッピングプロジェクトは、そんな学生たちの視点からスタートしました。

この取り組みを企画・運営したのは、西武文理大学サービス経営学部の学生たちです。
地域や社会と向き合う学びの中で、学生たちは運送業界が抱える課題や、日常の中で当たり前に存在している仕事の価値について考えてきました。

そこで浮かび上がったのが、「運送業をもっと前向きなイメージで伝えたい」「地域の人たちが目にする場所で、明るいメッセージを発信したい」という想いです。
この考えを形にする手段として選ばれたのが、トラックラッピングという方法でした。

デザインのテーマは「未来への彩り」。
学生たちは、温かさや希望を感じられる表現を大切にしながら、埼玉県らしさも取り入れたビジュアルを検討していきました。
キャラクターや背景には、地域を象徴するモチーフが描かれ、トラックそのものが“地域を走るメッセージ”として機能するよう工夫されています。

アイデア出しからデザインの方向性決定までの過程では、学生同士だけでなく、企業の担当者とも意見を交わしながら検討が重ねられました。
多くの案の中から一つを選び抜く作業は簡単ではありませんが、その分、学生たちの中で「なぜこの表現なのか」という意味づけが深まっていったといいます。

こうして生まれたラッピングトラックには、学生たちの学びや悩み、そして地域や働く人への敬意が、静かに込められています。
見た目の華やかさだけでなく、その背景にあるプロセスこそが、このプロジェクトの大きな特徴といえるでしょう。

完成披露会で伝えられた、プロジェクトの“いま”

完成したトラックラッピングは、2025年12月11日、西武文理大学のキャンパス内で披露されました。
この日は、プロジェクトに関わってきた学生をはじめ、大学関係者、企業関係者が集まり、これまで積み重ねてきた取り組みの成果を共有する場となりました。

会場では、ラッピングトラックが実際にお披露目され、学生たちが考え抜いてきたデザインが一つの形として現れました。
トラック側面に描かれているのは、学生が生み出したオリジナルキャラクター「日向(ひなた)ちゃん」です。
埼玉県川越市出身の若手ドライバーという設定で、「誰かに想いを届ける仕事がしたい」という想いに、希望や夢、そしてこれからへの期待が込められています。
荷物を抱えて前を向く姿は、運送業の現場だけでなく、これから社会へ踏み出していく学生自身の姿とも重なるように感じられました。

完成披露会では、プロジェクト実行委員長を務めたサービス経営学部2年の細野心春さんが、半年間の取り組みを振り返りながら言葉を寄せています。
「試行錯誤を重ねる中で、どんな時も自分の考えをしっかりと持ち、“成し遂げたい”という想いを貫くことの大切さに気づいた」というコメントからは、デザイン制作だけにとどまらない学びがあったことが伝わってきます。

また当日は、西武学園文理中学校・高等学校吹奏楽部による演奏も行われ、会場には穏やかで温かな空気が広がりました。
学園全体でこの完成披露会を祝うような時間となり、プロジェクトが大学の枠を越えて共有されていることが印象的です。

このラッピングトラックは、完成披露会で完結するものではありません。
今後は埼玉県内を実際に走行し、日常の風景の中で多くの人の目に触れる存在となります。
街の中でふと目にする一台のトラックが、運送業や地域の仕事に目を向けるきっかけになることも期待されています。

完成披露会は、ゴールというよりも、新たなスタート地点です。
学生たちの想いを乗せたトラックは、ここから地域へと走り出し、プロジェクトは次の段階へと進んでいきます。

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