菅野智之のWBC出場表明は、メジャーリーグ残留への大デモンストレーション――。
オリオールズからFAとなった菅野の来季の所属先はいまだ決まっておらず、場合によってはキャンプイン直前までずれ込むことが考えられる。
メジャー挑戦1年目の今季は先発ローテーションの一角を占め、10勝10敗、防御率4.64と、まずまずの成績を残した。1年契約ということもあり、現地ではシーズン途中のトレードを指摘する報道があったが、結局は宙ぶらりんのままだ。
36歳という年齢がネックになっていることと、前半戦はそれなりのピッチングでアピールしていたものの、後半戦に失速したため、あまり印象がよくない。獲得に二の足を踏むチームが多いのは理解できる。
契約条件も足かせになっているようだ。米在住ジャーナリストが言う。
「今季の年俸は単年1300万ドル(約20億円)ですからね。菅野サイドは複数年契約を希望しているようで、単純に1300万ドルの2年契約なら約40億円、3年なら約60億円にもなる。単年10億円程度なら興味を示すチームがあるかもしれませんが、高額契約は望み薄でしょう」
そこで菅野サイドが考えた作戦が、来年3月のWBCに出場し、メジャーリーグ各球団にアピールすることだという。今回のWBCにはアメリカ、ドミニカ、プエルトリコなどに、現役バリバリのメジャーリーガーが名を連ねている。スポーツ紙WBC担当記者は、
「菅野は自ら侍ジャパンの井端弘樹監督にアピールし、出場を確実にしました。本来なら所属チームが決まっていない状況で早々と参加表明するのは、不思議です。ホワイトソックスに入団した村上宗隆のように、入団条件のひとつにWBC参加を加える選手はいますが、菅野の場合はそれを条件に加えると故障のリスクを考え、手を出す球団がどんどん少なくなっていく。それでも日本人メジャーリーガーの投手で、最も早く参戦を決めた。WBCはメジャー関係者が多く観戦しますからね。そこでアーロン・ジャッジやカル・ローリー、カイル・シュワーバーなどを完全に封じれば、これ以上ないデモンストレーションになりますよ」
菅野は2017年のWBCに出場し、3試合に登板して0勝0敗ながら、防御率3.14で存在感を示し、メジャー関係者に強い印象を植え付けた。今回はその大会よりも大物選手が多く出場する.。二匹目のドジョウを狙うには格好の場だ。
(阿部勝彦)

