テニス界に衝撃を与えている男子テニス世界ランキング1位のカルロス・アルカラス(スペイン/22歳)とホアン・カルロス・フェレーロ氏の突然のコーチ契約解消。様々な憶測が流れる中、男子元12位で現在「マドリード・オープン」(スペイン/クレーコート/ATP1000)のトーナメントディレクターを務めるフェリシアーノ・ロペス氏(スペイン/44歳)は、かけがえのない恩師と決別した22歳の行く末を懸念している。
両者が離別に至った経緯については公式な説明はまだないが、スペインの放送局『RTVE』などは「契約交渉上の行き違い」が原因だと報じている。2025年シーズンのアルカラスは四大大会2勝を含むツアー8勝を挙げ、通算でも71勝9敗、さらには3年ぶり2度目の年間ランキング1位にも輝くという素晴らしい成績を残しただけに、なおさら衝撃は大きい。
先日スペインのラジオ局『COPE』の取材に応じたロペス氏は、今回の大きな“環境の変化”がまだ22歳の若獅子にとって多大な精神的負担を与えかねないとし、「ホアン・カルロス(フェレーロ氏)のような重要な人物と仕事をやめるのは、この段階ではまだ少し早いと思う」と持論を展開する。一方で一連の報道は大方事実だろうとの見解を示し、次のように語った。
「本当にカルロス自身が、ホアン・カルロスと仕事を続けたくないと決めたのかどうか、私は疑問に思っている。まだ若いカルロスがそうした決断を自分で下したとは思えない」
その上でロペス氏は「今回の決別には少し悲しさを感じる」と正直な気持ちを吐露。「少なくとも短期的には、ホアン・カルロスという象徴的な存在がない状況下で今後のキャリアに向き合うだけの精神的な準備がカルロスにできているのか、私にはわからない」と続けた。
フランスのスポーツメディア『RMC Sport』によれば、女子元世界7位のマリオン・バルトリ氏(フランス/41歳)もロペス氏と同様の意見を述べている。バルトリ氏は最悪のケースまで想定しており、フェレーロ氏の離脱が長期的にアルカラスの精神状態に影響すれば、自信喪失どころか20代での現役引退という事態に発展する可能性もあると警鐘を鳴らした。
「彼(アルカラス)は並外れた才能を持った選手だから、過度に心配しているわけではないけど、彼には周囲がしっかりと道筋を示す“管理された環境”が必要だと思う。それがなければ、25歳で引退したビヨン・ボルグ(スウェーデン/元1位)のように、早い段階でテニスから離れてしまう可能性はある」
ただ、そうした心配を和らげる材料は十分だ。事実、アルカラスはフェレーロ氏が不在だった計7大会(22年マイアミ、23年ロンドン・クイーンズ、24年全豪オープン、25年ドーハ、モンテカルロ、シンシナティ、東京)のうち5大会で優勝しており、残り2大会でもベスト8に進出している。これらの成績は、サミュエル・ロペス氏との新体制で迎える来シーズンに向けても、十分な期待を抱かせるものと言えるだろう。
文●中村光佑
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