
思春期の失恋は、人生で初めて味わうほどの大きな痛みになることがあります。
そんなとき、思いがけない人の一言が、心をそっと救ってくれることもあるようです。
今回MOREDOORでは、祖父母と孫の微笑ましいエピソードをご紹介します。
※当事者の声はさまざまです。あくまで一例として、ご参考にして頂ければ幸いです。
Fさんの場合
当時、祖父は80代、私は16歳の孫でした。
高校1年生のころ、初めての失恋を経験し、実家でひどく落ち込んで泣きじゃくっていた夜のことです。
誰にも会いたくなくて部屋に閉じこもっていると、祖父が静かに部屋へ入ってきました。
「説教なら聞きたくない」と、私が顔を背けたそのとき。
祖父は何も言わず、分厚いアルバムを机にドンと置いたのです。そして一言、「バカ言え。俺の武勇伝だ」。
祖父が開いたのは、色あせた一枚の写真でした。そこには若い頃の祖父が写っており、隣の人物だけが不自然に切り取られた跡がありました。
写真の正体とは……
「じいちゃんな、ばあちゃんに出会う前、こっぴどく振られたんだ。当時はこの世の終わりだと思ったよ」
そう言って、祖父は少し照れくさそうに笑いました。
そして私の頭をくしゃくしゃと撫でながら、「だからな、お前のその涙は絶対に無駄にならん。もっと素敵な未来のための、ただの準備運動だ」と、静かに語ってくれたのです。
祖父の意外な過去と、不器用ながらもまっすぐな優しさに、さっきまで止まらなかった涙が引っ込み、思わず笑ってしまいました。