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昭和のヒット曲『アゲイン』は「吉田拓郎のメロディー、アグネス・チャンの超絶高音の兼ね合いが素晴らしい」

昭和のヒット曲『アゲイン』は「吉田拓郎のメロディー、アグネス・チャンの超絶高音の兼ね合いが素晴らしい」

アグネス・チャン『アゲイン』
【スージー鈴木の週刊歌謡実話第18回】
アグネス・チャン『アゲイン』作詞:松本隆、作曲:吉田拓郎、編曲:松任谷正隆
1978年8月25日発売

当時のアグネスを彷彿させる歌詞

今週は、アグネス・チャンの『アゲイン』という曲です。

あくまで私の周辺だけかもですが、ちょっとマニアックな曲を取り上げた回の方が、どうも評判がいいようなので、今回も中ヒット曲を。

そんな本連載、ここ3回は、キャンディーズ『アン・ドゥ・トロワ』(1977年、吉田拓郎作曲)、金井夕子『パステルラヴ』(’78年、尾崎亜美の作詞作曲)、前回が布施明『シクラメンのかほり』(’75年、小椋佳作詞作曲)とフォーク/ニューミュージック系が続いています。

そして今回もまた吉田拓郎の作曲。ちょっと続いちゃいましたね。次回からは新機軸でいきますので、乞うご期待。

一種の「ドキュメント歌謡」と言っていいのではないでしょうか。

’76年、アグネス・チャンは、芸能界引退を表明。カナダのトロント大学に留学します。

しかし、いろいろな事情もあったようで、留学中もレコードをリリースする「半引退状態」となり、結局、’78年に再来日して、芸能界に完全復帰することになり、この『アゲイン』をリリース。

そんな復帰に対して、作詞の松本隆は、アグネス本人を想定したような主人公が、どこかから帰って来るという、ドキュメント的な歌詞を提供しました。

「♪お帰り! ただいま! 何処に行ってきたの レンガの色の学生街よ」

でも、そこから展開していく歌詞はフィクションでしょう。離れ離れになった恋人と再会して、主人公はこう語りかけるのです。

「♪アゲイン アゲインもう一度 あなた両手広げ受け止めてくれますか」

吉田拓郎のメロディーと、アグネス・チャンの超絶高音の兼ね合いが、とにかく素晴らしい。編曲は松任谷正隆。同じく当時、高音ボーカルでならしていた妻・ユーミンとのレコーディング経験を活かして、歌が映えるような音作りをしたのかもしれません。

スージー鈴木の週刊歌謡実話】アーカイブ

“流行語大賞”受賞するほど話題となった「アグネス論争」

そんな「♪アゲイン アゲイン」という高音サビの強い印象によって私は、『ひなげしの花』(’72年)や『草原の輝き』、さらには彼女最大のヒット『小さな恋の物語』(ともに’73年)よりも、断然『アゲイン』推しになったのでした。

さて、先日発表された新語・流行語大賞「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」ですが、’88年の流行語部門・大衆賞を憶えている方はいるでしょうか。

そう「アグネス論争」!

当時売れっ子だったアグネス・チャンが仕事場に長男を連れてくることについて、林真理子やコラムニスト・中野翠が批判し、それに対してアグネス本人や社会学者・上野千鶴子が反論する論争が長く続き、流行語大賞を受賞するほどの大きな話題となったのです。

あれから37年も経ちました。「アグネス論争」のことを憶えている方も多くはないでしょう。

ただ今年の大賞を見る限り、女性も、いや男性も、労働環境はまだまだ窮屈だよなぁと思ってしまう――。

歴史は繰り返します。アゲインアゲインもう一度。

「週刊実話」1月1日号より

スージー鈴木/音楽評論家
1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。
配信元: 週刊実話WEB

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