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なぜ「傑作」が苦戦しているのか? 映画『果てしなきスカーレット』が陥った“巨大配給”という落とし穴 <連載:アニメノミライ・ねとらぼ支店>

なぜ「傑作」が苦戦しているのか? 映画『果てしなきスカーレット』が陥った“巨大配給”という落とし穴 <連載:アニメノミライ・ねとらぼ支店>

宣伝の迷走と「正解のない問い」

 本作の宣伝プロデューサーは、あの大ヒット映画『国宝』などを手がけた東宝のエース・岡田直紀氏。岡田氏は『スタジオ地図15周年『果てしなきスカーレット』で挑む世界』(日経BP)収録のインタビューで、当初の宣伝コンセプトについて、過去作とは一線を画す「狂気」や「衝撃」を前面に出したと語っています。

 しかし、公開が近づくにつれ、その方針は揺らぎを見せます。

 「細田監督というブランドイメージと合致しない」という懸念を払拭するためか、10月以降の予告編では一転して、『時をかける少女』や『おおかみこどもの雨と雪』といった過去作の映像を引用するスタイルへと切り替わりました。

 「『時をかける少女』から19年」というコピーを添え、主人公を「運命を切り開くヒロイン」の系譜として紹介する。

 従来であれば、これはファンを安心させる定石です。しかし今回は、この「あとから付け足された安心感」が、逆に観客を混乱させたのではないでしょうか。

「新しい挑戦(衝撃)なのか? それともいつもの感動(安心)なのか?」

 メッセージがブレたことで、観客は「何を期待して劇場に足を運べば良いのか」が分からなくなってしまった。「意欲作なのに初週からガラガラ」という状況は、作品の中身そのものよりも、その魅力がうまく伝わらなかった結果、観客が足踏みしてしまった──その結果だったように思えます。

「狭く濃く」が熱を生む――『空の境界』と『この世界の片隅に』の教訓

 では、どうすればこの「難解な良作」を正しく届けることができたのでしょうか。ここで、あえて「規模を絞る」ことで熱狂を生み出した過去の成功例を振り返りましょう。

 その代表例が、2007年に公開されたufotableの出世作『劇場版 空の境界(第一章)』です。

 当初はテアトル新宿のみの「単館公開」でした。しかし、そのクオリティと作家性に惹かれたファンが殺到し、レイトショーにもかかわらず連日満員札止めを記録。わずか1館での公開ながら、4週間で動員約2万人という記録的な数字を叩き出しました。

「チケットが取れない」「すごい熱気らしい」

 この事実がファンの飢餓感を煽り、結果的にDVDは累計枚数10万枚を超える大ヒットシリーズへと成長しました。

 また、2016年の『この世界の片隅に』では、そこにクラウドファンディングとSNSによるバズという要素が加わります。当初の公開館数はわずか63館。初週の興行ランキングは10位でしたが、満席の劇場が続出したことでSNSでの口コミが爆発しました。

 「見られない地域があるなら私が呼ぶ」とファンが配給を手伝うような動きまで生まれ、テレビ・新聞にも話題を提供し続け、最終的には累計動員210万人、興行収入27億円、公開館数は480館以上にまで拡大するロングランヒットとなりました。

 これらに共通するのは、「劇場のキャパシティ」と「ファンの熱量」が釣り合っていた(あるいは熱量が上回っていた)」という点です。「満席」という光景は、それ自体が作品の価値を高める広告になるのです。

配信元: ねとらぼ

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