・なか卯
イメージ的に、最もクオリティが高そうな印象のある なか卯。海鮮丼の経験値が他と比較にならない点が、そう思わせるのだろう。
切り身のサイズが興味深い。松屋・すき家はどちらも統一感があった。しかし なか卯はサイズが定まっていない。他の二社と比べ、圧倒的に大きい切り身と、圧倒的に小さい切り身がどちらも入っている。
だが、なか卯の平均的なサイズの切り身は、すき家の切り身と同じようなサイズになると思われる。なか卯は重さで管理しているのかもしれない。
また、なか卯のサーモンは “漬け” だ。公式HPには “なか卯特製のタレに漬け込んだ” とある。2種類の醤油に鰹と昆布出汁だそう。旨味の相乗効果を狙ってそうな調合。漬けっぽい色をしている。
そしてなか卯の平均的切り身を箸でつまんだ際のビジュアルは、松屋の切り身を箸で持ちあげた時と大差ない。サイズは三社とも似たようなものだと考えていいのではなかろうか。
つまりサイズは似たり寄ったりで、炙りの松屋、裸のすき家、漬けのなか卯というわけか。見事に三者三様だったな。
食べてみると、なか卯は松屋に匹敵するこってり&とろみタイプなもよう。しかし脂の味と臭いは、身の舌ざわりから想定されるオイリー感より軽減されているように思う。これは漬けの影響ではないか?
また先に すき家のものを食べた影響で経過時間的に不利なはずだが、全く生臭くない。この耐久力も漬けのおかげであろう。
ということで、好奇心から全制覇した三社のサーモン。経験が光っているなと感じたのは、なか卯だ。
脂の乗ったサーモンのクオリティは繊細だ。しかし漬けにすれば、食べた時に客が生臭いと感じてしまう可能性を、確実に下げることができる。
店が想定する品質を提供できる可能性が一番高いスタイルを選択している。世間的な味の評価も、おおむね一般的な漬けサーモン相応のものになるのではなかろうか。
逆に感想にブレが出やすいのは、松屋ではないかなと思う。松屋は何でも濃厚でこってり感が強めだ。脂こってりトロトロ炙りサーモンは、顧客の需要にあってそう。
理想的な状態のものを、松屋ファンが店舗で食べた場合の味の評価は、おおむね高いのではないかと思う。しかし全国にはテイクアウト派もいるだろう。
その中には食べるまでに酸化を進行させてしまう人も出ると思われ、生臭いという感想が一定数発生すると私は予想する。
そして裸で勝負した すき家。ハリがあるさっぱりした切り身が個体差でなく、意図したものであれば、これも一つの正解だろう。最もピュアなサーモンらしいサーモンは、すき家だったと思う。
海鮮丼の類でどこまで差が出るものか疑問だったが、想定を超えた全く異なる仕上がりには驚かされた。同時期に同じような商品を出して、ちゃんと全部違う。うまいことできてます。
