
「もっと筋肉があったほうがモテるのでは」「頼りがいを見せるには、とにかく強く見えることが大事」
そんなイメージを抱いたことがある人は多いかもしれません。
しかし米カリフォルニア大学(University of California)の最新研究で、恋愛対象としての魅力を大きく左右するのは、身体的な強さそのものではなく、ある行動の姿勢であることが明らかになりました。
その行動とは「危険な場面で、相手を守ろうとする意思を示すこと」だったのです。
研究の詳細は2025年8月30日付で学術誌『Evolution and Human Behavior』に掲載されています。
目次
- 人類の進化史がつくり出した「モテの基準」
- 実験で判明した「モテる行動」の正体
人類の進化史がつくり出した「モテの基準」
研究の出発点は、人類の進化史にあります。
私たちの祖先が生きていた時代、他者からの暴力は日常的で深刻な脅威でした。
警察や司法制度のない社会では、身を守る手段は、家族や友人、恋人といった身近な人間関係に限られていました。
そのため、人間の心理は「この相手は、自分が危険にさらされたときに立ち向かってくれるか」という点を、無意識のうちに重視するよう進化してきたと考えられています。
現代社会では暴力に遭遇する機会は原始時代に比べると減っていますが、その心理的な基準だけは、今も私たちの中に残り続けているというのです。
実験で判明した「モテる行動」の正体
チームは、アメリカ在住の成人4,508人を対象に、計7つの心理実験を行いました。
参加者は、恋人や友人と一緒にいる場面を想像しながら、ある共通のシナリオを読みます。
その場面とは、レストランを出た直後に、酔った人物から突然攻撃されそうになるという状況です。
研究者は、そのときの「一緒にいる相手」の反応を、いくつかの条件に分けて提示しました。
ある条件では、相手が危険に気づき、体を張って守ろうとします。
別の条件では、相手は危険を認識しながらも、その場を離れてしまいます。
さらに、相手が危険に気づかなかった場合も設定されました。
加えて、相手の身体的な強さについても、「平均より弱い」「平均的」「平均より強い」といった情報が与えられました。
その結果は、非常に明確でした。
守ろうとする意思を示した相手は、身体的な強さに関係なく、恋愛相手としても友人としても魅力が大きく高まったのです。
一方で、危険を前にして逃げた相手は、評価が大きく下がりました。
特に顕著だったのは、女性が男性の恋愛相手を評価する場面です。
男性が「守ろうとしなかった」場合、その魅力度は急激に低下し、事実上の決定的欠点として受け取られていました。
逆に、守ろうとしたものの失敗し、押し倒されてしまった場合でも、「立ち向かおうとした」こと自体が高く評価されていたのです。
さらに分析を進めると、身体的な強さが好まれる理由も見えてきました。
女性は確かに「強い男性」をやや好む傾向を示しましたが、それは「強い人ほど守ってくれそうだ」という推測を通じたものでした。
「守ろうとする意思」を統計的に取り除くと、筋力そのものの効果は大きく減少したのです。
つまり、モテに効いていた本質は筋肉ではなく、覚悟だったということになります。
「結果」よりも「姿勢」が人の心を動かす
この研究が示しているのは、恋愛における魅力が、必ずしも成功や能力の高さだけで決まるわけではないという点です。
たとえ結果的に守りきれなかったとしても、「危険を前にして一歩踏み出そうとする姿勢」そのものが、相手に強い印象を与えます。
現代社会では、私たちは実際に暴力に立ち向かう場面に遭遇することはほとんどありません。
それでも、人の心は今なお、「この人は、いざというときに逃げないか」という無言の問いを投げかけ続けています。
恋愛対象としての「モテ度」を高める近道は、見た目を鍛えることよりも、相手の立場に立ち、必要な場面で責任を引き受けようとする態度を示すことなのかもしれません。
その行動の積み重ねこそが、進化の歴史が選び抜いてきた「魅力の正体」だと言えそうです。
参考文献
New psychology research identifies a simple trait that has a huge impact on attractiveness
https://www.psypost.org/new-psychology-research-identifies-a-simple-trait-that-has-a-huge-impact-on-attractiveness/
元論文
Willingness to protect from violence, independent of strength, guides partner choice
https://doi.org/10.1016/j.evolhumbehav.2025.106745
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

