かしこまった肩書きからあえて逸脱し、現代の都市生活にフォーカス|BARACUTA/G9

ハリントンジャケットの代名詞[G9]。1937年、英国マンチェスターで誕生し、スティーブ・マックイーンやジェームズ・ディーンといった時代の寵児たちが愛用したことで、瞬く間にスタイルシンボルとなった。ライニングのフレーザータータン、ラグランスリーブ、アンブレラカットなど、象徴的なディテールの数々もまた、このモデルを不動の存在へと押し上げた。
とはいえ、ここで注目したいのは“黒”だ。英国発祥の気品とアメカジ由来の軽快さを併せ持つ本モデルが、黒に染まることで意外性という化学反応を起こし、モダンな印象へと変貌を遂げる。ライニングも、黒の外装によって一層際立ち、内外のコントラストが美しく強調される。
英国の職人技が宿るオーセンティックな一着が、黒を纏うことで放つ新鮮さ。歴史的定番という肩書きに甘んじることなく、現代の都市生活にフィットするライトアウターへと進化した。その答えのひとつが、“黒”という選択肢なのだ。5万9400円(伊勢丹新宿店 TEL03‒3352‒1111)
単なる小物ではなく、スタイルの核となる一本|BENTLEY CRAVATS/KNIT TIE

今日もなお、裁断以外のすべての工程をハンドメイドで行う伝統を守り、世界各国の一流メゾンのOEMでも知られる「ベントレー クラバッツ」は、1956年にニューヨークで創業した知る人ぞ知る名門。その代表作ともいえるのが、シンプルながらも品格を備えたシルクのニットタイである。幅6㎝という汎用性の高いサイジングにより、ドレスからカジュアルダウンまで自在に対応。モノトーンの装いに合わせれば、圧倒的な引き締め効果を発揮する。
表面にはニット特有の柔らかな質感と程よい光沢があり、クラシックな佇まいにさりげない華やぎを添えてくれる。丁寧な縫製と老舗ならではの精緻な仕事が、日常の一本を確かな存在感へと昇華させるのだ。ここでも、無難な色ではなく、装いに強度を与える“黒”をあえて推したい。ブランドが積み重ねてきた伝統と、黒が持つ普遍的な力。そのふたつが共鳴したとき、単なる小物ではなく、スタイルの核となる逸品へと変わる。もちろん、急な冠婚葬祭にも対応できる汎用性の高さも記しておきたい。1万5730円(メイン TEL03‒32
64‒3738)
フィールド由来の普遍性を現代の感覚で再定義|Eddie Bauer/SKYLINER

1936年、創業者のエディー・バウアーが自身の低体温症の体験をもとに開発した、世界初のダウンジャケットがこの[スカイライナー]だ。その歴史的背景から、本モデルにはクラシックなカーキやネイビーといったアウトドア由来の定番カラーが似合うと考える人も少なくない。だが、あえて“黒”という選択肢をとると、この名作は異なる表情を見せる。
本モデルの本質は、言わば道具としての機能美と構築的なデザインにある。ダイヤモンドキルトのステッチや短めの着丈、無駄を削ぎ落としたシルエットは、約90年前に誕生したとは思えないほど、計算し尽くされた造形美と言える。そんな造形を黒が際立たせる。光を吸い込むようなブラックは、陰影を強調し、ステッチの立体感をよりシャープに映し出す。決して奇をてらったものではなく、むしろジャケットの持つ普遍性を現代の感覚で再定義する試みでもあるのだ。4万4000円(エディー・バウアー吉祥寺店 TEL0422‒26‒5350)
王道インディゴとは異なる退色感も魅力のひとつ|LEVI’S/501®

以前本誌でもお伝えしたように、実は1903年のカタログですでに掲載されていたブラックデニム。そんなリアルワーカー御用達だったブラックデニムを、ファッションのフィールドへと押し上げたのが、1890年のデビュー以来、王座に君臨し続けるアイコンモデルの[501]だ。1980年代以降、モードやロックといったユースカルチャーとシンクロしながら着実に市民権を得ていったブラックデニムは、近年のトラッドシーンでも、王道インディゴとは異なる魅力に多くの支持が集まっている。
特に本モデルは、脇割り部にセルビッジを備えたプレミアムな仕上がり。新品ならではのシャープさを楽しむもよし、経年変化によってグレーへと褪せていく姿を愛でるもよし。一本で2度3度と表情を変える。そんな変化を楽しむのもブラックデニムならではの醍醐味だ。デニム上級者であっても、ジーンズにはまだこんな余白があったのかと気づかせてくれる一本である。1万8700円(リーバイ・ストラウス・ジャパン TEL0120‒099‒501)
(出典/「2nd 2025年12月号 Vol.215」)