話が弾んで、気づけば終電の時間
その日は、マッチングアプリで知り合った彼との初めてのデートでした。メッセージのやり取りでは穏やかで誠実そうな印象だった彼。実際に会ってみると、想像通りの優しい雰囲気で、会話も自然と弾みました。駅近くのカフェで待ち合わせをして、そのまま夕食へ。
話題が尽きることなく、気づけば時計の針は夜遅くを指していたのです。「あ、終電……」と慌てて確認したときには、すでに最終電車は出発した後でした。少し焦りながらも、私は心のどこかで「彼と一緒なら、なんとかなるだろう」と思っていました。
彼から予想外の言葉
ところが、彼の口から出たのは思いもよらない一言でした。「俺、タクシーで先に帰るわ」。私は一瞬、耳を疑いました。終電を逃したのは二人とも同じ状況。当然、一緒に帰る方法を考えてくれるものだと思っていたからです。
「え、私は……?」と聞き返すと、彼は少し困ったような顔をして「ごめん、明日早いんだよね」とだけ答えました。そして、私が何か言葉を返す間もなく、彼は手を挙げてタクシーを止め、一人で乗り込んでいったのです。
