京都鉄道博物館で行なわれていた鉄道とモータースポーツのコラボレーションイベント「レーシング&レールウェイ ヒストリー」が、12月21日をもって幕を下ろした。
約2ヵ月間、新幹線や機関車など様々な鉄道車両が並ぶ京都鉄道博物館に、F1マシンを展示。会期中最終週末となった20日と21日には、メインの展示エリアとも言える本館1階に5台の新旧F1マシンが所狭しと並べられた。また多数の蒸気機関車が鎮座する扇形車庫では、マクラーレンMP4/6のエンジン始動デモンストレーションも行なわれた。まさに華々しいラストであった。
この最終週末には、トークショーも行なわれた。ここに登場したのが元F1ドライバーの鈴木亜久里、そしてDOCOMO TEAM DANDELION RACINGからスーパーフォーミュラに参戦する牧野任祐と太田格之進のふたりであった。
D51形蒸気機関車1号機の前に設られた特設ステージでモータースポーツの話が繰り広げられるのはまさに新鮮。このトークショーを見るために、わざわざ遠路はるばるかけつけたモータースポーツファンも多かっただろうが、鉄道車両目当てに来場したお客様の耳にも、モータースポーツの話題が届いたことであろう。モータースポーツの人気拡大のためには、非常に重要なイベントだったと言えよう。
■鉄道とレーシングカー、まさに異文化交流
「こういうのは、良いと思いますよ。異文化交流みたいで」
鈴木亜久里はトークショー終了後にそう語った。
「まあ、モータースポーツ好きの方が多くいらっしゃっていると思うんですけどね。でも、関西圏でもモータースポーツのイベントって少ないですから、そういう部分でも、今回ここでやってもらったのはよかったんじゃないかなと思います」
「でも、京都鉄道博物館もHRC(ホンダ・レーシング)も、よく協力してくれたなと思います。関係者の皆さんも、よく会社を説得したなと。F1マシンもこれだけもってきて……すごい良いことだと思いますよ」
現役のドライバーふたりも今回のイベントを楽しんだ。
「レースウィーク中はプレッシャーもあったりしますが、今回はトークショーにある意味集中できました」
太田はそう語った。
「こういうところでトークショーできるというのは、新鮮な感じでした。そしてレースファンの人たちが、わざわざここまで来てくれることの重要性も感じています。そこは本当に素晴らしい、ありがたいことだと思いました」
一方で牧野は、前出の鈴木と同じように、関西圏でトークショーができたことを喜ぶ。
「僕は関西出身ですが、関西ではこういうイベントがあんまりないんです」
「でも今回のように関西でイベントがあれば、こっちに住んでいるファンの皆さんが来てくれる。こういうイベントが増えていけばいいんじゃないかなと思います」
またふたりは、今回のような異色のコラボレーションにより、新たなファンを獲得するだけでなく、以前ファンだった人たちを改めて引き戻すこともできるのではないかと考えている。
「スーパーフォーミュラは、今すごい成長曲線を描いていると思います。それにブーストをかけるためにも、今回のように”まずはレース全体を好きになってもらう”というイベントは、プラスになるばかりだと思います。それはプロモーターにとっても、メーカーさんにとっても、ドライバーにとってもです」
■若い世代のファン獲得が重要
そう言う太田は、牧野と共にホンダV12エンジンのサウンドに酔いしれた。街中であのサウンドを聴ける機会など、ほとんどないだろう。
「今回はF1のV12エンジンの始動デモがありましたが、こういうのは本来ならサーキットでしか聞けませんし、ホンダだからこそできることだと思います」
「最近は、若者のファンが増えているような印象があります。今回のイベントは、そういう人を掘り起こすのにも寄与してくれると思います。また、昔好きだったけど、最近はサーキットに行っていないなぁという人たちを、サーキットに呼び戻す効果もあると思います」
牧野は、今年公開されて大ヒットした映画「F1/エフワン」にも同じような効果があったのではないかと指摘する。
「レースを知らなかった人が、レースに興味を持つということって、大変なことだと思います。でも今年F1の映画があったじゃないですか? あれはすごく効果があったんじゃないかと感じています」
「僕の周りの友達がみんなあれを観て、それでレースを観に行きたいと言う人がすごく増えている。いろんなところから、きっかけは作れると思います」
「そして今回京都鉄道博物館でイベントをやらせてもらって……もちろん僕らのことを知っていて来てくださった方も多いと思うんですけど、鉄道を見に来た方の中にも『なんだろう?』と興味を持ってもらった方がいるかもしれないと思います……もっと色んなところで今回のようなイベントができればいいですね」
今後はどういうところでイベントをすれば、モータースポーツの人気拡大に繋がると思うか? そう尋ねると、三者三様の答えが返ってきた。
まず太田はこう言う。
「ドライバーとしては、多くの人の目に直接触れる機会を増やしていく……こういうアクセスしやすい場所、他にも見所が色々とある施設でやっていけるのは、すごくいいなと思います」
「例えば遊園地とか。そこで今回のエンジン始動デモのようなことができれば、それだけでも人が集まるし、通りすがりの人も見てくれるかもしれない。そこからレースを好きになってくれればと思います」
「若者、僕らと同じ世代の人にもっと広げていかなければいけません。もっと若者に直接アピールできるような場所でイベントができれば、いいなと思います」
牧野は、他のスポーツのファンに働きかけることも効果的なんじゃないかと説いた。
「サッカースタジアムに行ったりするのは、これまでもSFではやってきたと思います。それを他のスポーツ……例えば野球とか、そういう他のジャンルのスポーツのところに行ってやるというのも、ひとつの手だと思います」
■きっといつか、世界を驚かせるドライバーが日本から登場する?
一方で鈴木は、今回の関西のように、これまであまりモータースポーツのイベントが行なわれてこなかった地域でイベントが行なえれば効果的なのではないかと語った。
「サーキットがないところ……トムスは今広島にカート場(ひろしまモビリティワールド)を作っていますし、あとは日本海側とか、そういうところでイベントができると、お客さんにたくさん集まってくれるんじゃないかなと思います」
「そういう場所にも、モータースポーツに興味を持ってくださる方はいっぱいいると思います」
なお鈴木は、日本のモータースポーツが盛り上がるために必要な、最も重要なことがあるという。それが、世界のトップクラスで活躍するドライバーの存在だ。
「やっぱり、世界タイトルを争うようなドライバーが出てくるかどうかというところが大きいと思いますよ」
そう鈴木は言う。
「大谷翔平選手だってそうじゃない? 日本人が大リーグに行ってあれだけの成績を残すと思っていた人は、少し前までは誰もいなかったわけじゃないですか」
「レースの世界でも、そういう存在が出てこないとも限らない……いや、きっと出てくると思うよ」

