
雨清水タエ役を演じる北川景子さん(2018年12月、時事)
【画像】え…っ! 北川景子級? コチラが「松江藩随一の美女」と言われた「タエのモデル」人物の娘、実際の「小泉セツ」さんです
小泉セツの母が何度も語った「キツネの話」
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、1890年に来日し、『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え、「再話文学」の元ネタとなるさまざまな怪談を語った、妻・小泉セツさんがモデルの物語です。
第13週63話の最後では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」とかつての夫「銀二郎(演:寛一郎)」が月照寺に行き、未来の夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」とヘブンの元同僚「イライザ・ベルズランド(演:シャーロット・ケイト・フォックス)」、「錦織友一(演:吉沢亮)」と出くわしてしまいます。
明日64話のあらすじを見ると、5人は互いに自己紹介をした後、ヘブンの希望でトキが月照寺に伝わる怪談を話すことになるそうです。おそらく、作中に何度も登場している月照寺の「大亀像」について話すのでしょう。
この大亀像の上には、松江藩当主の松平家七代。治郷公が父・宗衍公の徳を讃え、長寿を祈願するために建立した寿蔵碑が乗せられています。ラフカディオ・ハーンさんが日本に来てから始めて書いた著作『知られぬ日本の面影』には、このような話が載っていました。
この大亀像は夜に動き出し、周辺の人びとに災いをもたらす怪物だったそうです。村人たちが恐れおののくなか、寺の住職が仏の教えを説いて、大亀に懺悔をするようにいいます。亀は「自分の力ではどうにもならない」と言って、大きな石碑を甲羅に背負って自らを封じ、今の大亀像の姿になったそうです。
おそらく64話でトキはこの話をするのでしょう。
また、トキのモデル・小泉セツさんの実母・小泉チエさんは、月照寺にまつわる、不思議な出来事を体験したそうです。
セツさんが生まれる少し前のある夜、チエさんは実家の塩見家を訪ねた帰り道を、女中と若党をひとりずつ連れて歩いていました。すると、チエさんの着物の裾脇すれすれを、キツネが通り抜けていきます。それから、犬2匹がキツネを追うように走ってきました。
そのうちの1匹がチエさんにぶつかりそうなほど近付いて走り抜けようとしたため、彼女は「無礼な」と怒って、折りたたんだ雨傘でその背中を叩いたそうです。その後、犬2匹は女中と若党によって、今来た方へ追い返されました。
それから数日後の夕方、小泉家を小柄な品のいい女性が訪ねてきます。女性は「月照寺のテイ坊」という者からチエさんへのお礼の品を持ってきたと言って、取次の者に小さな包みを渡しました。
チエさんはテイ坊なる人物に心当たりはなく、その女性に会おうとしますが、すでに彼女の姿はなく、包みの中身を見ると、そこには二分銀2枚と南天の葉が1枚入っていたといいます。その後、月照寺に問い合わせてもテイ坊という者はいませんでした。チエさんは、犬に追われていたところを救われたキツネが、月照寺の人間としてお礼に来たのだと思ったそうです。
こちらは、セツさんが幼い頃からチエさんに何度も語って貰ったお気に入りの話でした。チエさんがモデルのトキの実母「雨清水タエ(演:北川景子)」も、このような体験をしているのでしょうか。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)、『新編 日本の面影』(著:ラフカディオ・ハーン/訳:池田雅之/KADOKAWA)
