バラエティー番組とはいえ、さすがにこの発言には愕然とした視聴者が多かったようだ。その証拠に番組終了直後、ヤフコメに寄せられたコメントは3600件超え。大半が批判だった。
石破茂前総理の口から爆弾発言が飛び出したは、12月23日放送の「ホンネ喫茶 永田町」(フジテレビ系)のひと幕。フリーアナの神田愛花からズバリな質問が飛び、それに答えたのだが…。
「今後また風が吹いたら総理大臣をやりますか」
「もっとふさわしい人って、世の中にいっぱいいる。『自分がやりたい』だけでやられたら、国民の皆さんは迷惑この上ないのであって。ふさわしい自分であるかという努力はしなきゃいかんでしょうよ」
「最後に聞きますね。男・石破茂、もう一回、風が吹いたら総理大臣をやりま…」
「やりましょうか」
番組を盛り上げるためのリップサービスにせよ、この「再登板への意欲」に、放送直後からすさまじい「拒絶反応」が沸き起こることになった。全国紙政治部記者が苦笑いしながら語る。
「私もたまたまこの番組を見ていたんですが、いくらバラエティー番組の居酒屋トークでも、仮にも一国の総理大臣を担った人物が、再登板を軽々しく口にするのはいかがなものか。しかも『もっとふさわしい人がいる』と謙遜しつつ、結局は演出側に乗せられて、本音とも思える権力欲と『居座り願望』が引き出される格好になってしまったわけですから。『ふさわしい自分である努力』云々は、裏を返せば『自分がふさわしいかどうかは自分で決める』という自己肯定の裏返しと聞こえなくはない。サービストークかどうかはわかりませんが、再登板を口にするのであれば、まずは退陣から何を学び、何を反省したのか、失敗を総括すべき。簡単に再挑戦を口にすることは、国民にとってただの迷惑でしかないのでは」
一度死んだはずの権力欲が、居酒屋でふと蘇ったのだろうか。年末を迎えるというのに、庶民の味方だった卵までが高騰する昨今。奇しくもこの番組が視聴者に痛感させたのは、日々の物価高に喘ぐ国民を尻目に「風待ち」の余裕を見せる元総理と国民の「絶望的な温度差」だったのかもしれない。
(灯倫太郎)

