離島の子もクラブを近くに感じてほしい
府中市で行われたFC東京のサッカー教室。都会のなか、整備された環境でサッカーを楽しめるもちろん、FC東京は公民連携制度「S-SAP(シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー)協定」を結んでいる渋谷区など都心でもサッカー教室を開催している。都心から離島まで、様々な環境の子どもたちとの関わりに取り組んでいるクラブだ。
「都心に住む子どもたちは色々なサッカー教室やサッカークラブなど、サッカーをするのにも無限の選択肢があります。それは都心の良さです。一方で、離島の子どもたちはそうした選択肢はないことに不便さがあるかもしれませんが、家の横ですぐにボールを思いっきり蹴られるような環境があります。これは都心ではなかなか難しく、ボールを蹴るためにサッカー教室に入るという子もいるでしょう。どちらがいいというわけではなく、どちらもそれぞれの特徴です」(中村氏)
ただ、離島では、プロクラブのサッカーに触れる機会はどうしても少なくなる。FC東京の教室はそのための補完の役割を果たしているようだ。
「それぞれの島に行けるのは年に1回ですし、その1回は正直微力だと思います。それでも島の皆さんのサッカー、スポーツに触れる機会に繋がってくれていればうれしいです。距離的に離れていても同じFC東京のホームタウン、東京都です。サッカー教室に参加してくれた子どもが大人になり、上京した時に『以前参加しました』と言ってくれたことがありました。その時はFC東京を身近に感じてくれているのだと本当にうれしかったです。これからも離島地域の都民からも身近なクラブであり続けたいです」と語った。
島と島、島と本州を結ぶ役割も
青ヶ島から見渡せる太平洋。どこまでも見渡す限り海と空が広がるFC東京はこうした教室の活動以外にも離島との接点を強化している。
そのひとつが、離島地域の子どもたちを集めて行うフットサル大会や島の自慢を発表しあう「島じまん大会」など、様々なイベントが企画されている「愛らんどリーグ」への協力だ。
参加するのは、大島町・利島村・新島村(新島・式根島)・神津島村・三宅村・御蔵島村・八丈町・青ヶ島村・小笠原村(父島・母島)の11の島々の子どもたち。
開催地は基本的に島々の持ち回りで行われ、一か所に11の島々の子どもたちが一堂に集まる。この企画は離島間の交流にもつながっていると中村さんは話す。
「島の方々から伺いましたが、東京の離島は2つの航路に分かれているそうなんです。航路が同じ島々は交流があるそうですが、別の航路になってしまうとなかなか交流することはないそうなんです。そうした島々の交流にもつながっていて、子どもだけでなく、大人も楽しんでくださっているようです」
他にも2024年のホームゲームでは、離島地域のPRブース「東京愛らんど」が出店。地元の名産品が並び、来場者の関心を集めたそうだ。
また今年から、子どもたちの「体力」「スポーツに親しむ機会の向上」に焦点を当てた小学校の体育教材「あおあかドリル」をすべての島の小学校1年生に無償で配布を開始している。これも少しでも体験格差の是正に繋がればという取り組みだ。
同じ都道府県の中でも体験格差は存在する。日本の首都機能が集積している場所もあれば、本州から何百kmも離れた離島があるという東京都のケースはまさにそうだろう。その全市区町村をホームとし、全ての子どもがサッカーに触れられるようにしようという活動は格差をなくすという意味で非常に重要だ。子どもたちが自分の生まれた環境で夢を諦めないような活動を応援したい。
text by Taro Nashida(Parasapo Lab)
写真:FC東京
