詐欺電話や悪徳セールスが横行する中、知らない電話番号からかかってきたら「出ない」が新常識になりつつある。総務省の調査でも、固定電話を常時留守電にしている高齢者世帯は年々、増加中だという。確かに「この電話は〇〇の未納料金が…」などと脅す詐欺を思えば、防御策としては理にかなっている。
ところが、だ。その用心深さが思わぬところで弊害を生んでいる。年末年始を前に、エアコンや給湯器、換気扇といった生活家電の修理業者から「予約を受けたのに、電話したら出ない客が多すぎる」という嘆きの声が噴出しているのだ。とある修理業者が苦労を打ち明ける。
「訪問前の確認電話は必須なんですが、何度かけても出てもらえないことが本当に多い。直接伺うという手もありますが、今度はそれが余計に怪しまれてしまうケースもある。年末の繁忙期にこれは正直、かなり痛いですね」
特に多いのが、ネットや量販店経由で修理予約をした高齢者世帯。「知らない番号は詐欺」と思い込み、業者からの着信までシャットアウトしてしまうケースがあとを絶たないのだ。業者側はスケジュールが崩れ、他の客にも迷惑がかかる悪循環に陥る。
消費者側にも言い分はある。「出たら最後、詐欺だったら怖い」「留守電に入れない相手は信用できない」といった不安はもっともだろう。専門家は「予約時に業者の電話番号を必ず登録する」「事前にSMSやメール連絡を依頼する」といった対策を勧めるのだ。
詐欺対策と生活インフラの維持のバランスが問われる年末。電話に出ない防御が無用なトラブルを招かないよう、今一度、見直す必要がありそうだ。
(カワノアユミ)

