リアム・ローソンは2025年シーズンを、レッドブルのドライバーとしてスタートさせた。念願のトップチーム入りであり、チームメイトは前年まで4年連続でF1王者に輝いたマックス・フェルスタッペン。意気揚々とシーズンに乗り込んだはずだ。
しかし現実は厳しかった。開幕戦オーストラリアGPの予選でローソンは、予選18番手。第2戦中国GPでは好転の兆しすら見えず、スプリント予選でも予選でも最下位に終わった。
ドライバー交代という観点では容赦のないレッドブルは、この2戦でローソンを見限り、第3戦日本GPからは角田裕毅をレッドブルRB21に乗せた。ローソンは、前年まで在籍していたレーシングブルズに戻ることになった。
レッドブルの首脳陣は、開幕2戦の状況があまりにも深刻であり、ローソンの将来が制御不能に陥ることを危惧していたため、この措置を採った。しかしローソン本人としては時間が必要だっただけであり、パフォーマンスが振るわないのは、自身のドライビングに自信が持てなくなったからではないと主張した。
「正直に言って、十分な時間があれば理解できたはずだと思っていた」
そうローソンは振り返る。
「2レースというのは……正直に言って、あまり覚えていないんだ。でも今年は多くの出来事があり、そのことが僕を大きく成長させてくれた」
ローソンは角田との交代を告げられた際、不当な扱いを受けたと感じていた。しかしそのことに悩む暇もなく、ローソンは鈴鹿サーキットでの日本GPから、レーシングブルズでの新たなキャリアをスタートさせた。
ただこのことが、ローソンのF1における将来を救うことになったと言っても過言ではない。
レッドブルは来季の2チーム(レッドブルとレーシングブルズ)4台のマシンに誰を乗せるか、多くの選択肢があった。マックス・フェルスタッペンのシートは不動だとしても、FIA F2を走るアービッド・リンドブラッドをデビューさせるとなると、残り3つのシートを4人(ローソン、リンドブラッド、角田、アイザック・ハジャー)で争わねばならないということを意味していた。
本来ならば、レッドブルのシートから降格させられたローソンが、もっとも危うい位置にいたはずだ。しかしローソンの後任としてレッドブルに昇格した角田も、ローソンほどではないものの苦戦。フェルスタッペンには大きく水を空けられた。一方でローソンは、レーシングブルズに降格させられた直後こそハジャーに後れを取っていたものの、徐々にその差を縮めることができ、安定したパフォーマンスを発揮するようになった。
そして最終的にローソンは、来季のレーシングブルズのシートを掴むことができた。シートを失うことになったのは角田だった。
「リアムは素晴らしい仕事をした。シーズンを通じて安定し、レースペースは常に非常に力強い」
チームのCEOであるピーター・バイエルは、アブダビGPの際にそう語った。
ローソンはこれまでに、35回のグランプリに出場した。しかしひとつのチームでフルシーズンを戦うという”贅沢”を、まだ享受できていない。2026年シーズンは、ようやくそのチャンスを掴む年ということになるかもしれない。
「この1年を振り返ると、間違いなく大きな進歩があったと思う」
そうローソンは振り返る。
「特にシーズン序盤に移籍を強いられた時よりも、今はずっと快適な立場にいると自信を持って言える」
「もちろん、ただ追いつこうとしているだけだった。シーズンが進むに連れて、だいぶ慣れてきた。統計的に言えば、かなり良くなったんだ。でも個人的な面では、常に振り返って学ぶべきことがたくさんあるんだ」

