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実現不可能なのか!? 著者・井上由一氏に訊く世界初『黒澤明 オリジナル映画ポスター・コレクション』完成までの道のり

昭和カルチャー俱楽部で好評発売中の『黒澤明 オリジナル映画ポスター・コレクション』。実現は困難、不可能とも言われてきた本書はいかにして誕生したのか。本書の編著者であり、映画ポスター・コレクターとして活動する井上由一氏に、その制作背景から黒澤映画への想いに至るまでをじっくりと聞いた。

黒澤映画のリバイバルビジネス

──先日『七人の侍 【新4Kリマスター版】』を観に行きました。黒澤監督の映画は何度もリバイバルしていますよね。

劇場で上映される⿊澤映画は、まるで熱にうかされたかのように何回も観に⾏くお客様が多いと思います。お金が儲かるイコール新たな素材を作り直せる。例えば、画面のゴミを取る作業ひとつをとっても膨大な費用が掛かるのですが、ちゃんとペイできる。『七⼈の侍』だけではなく、黒澤監督の映画は特にそういう作品が多いと思います。私も今回の書籍化にあたって久しぶりに⿊澤監督の全作品を観て、全く新しい映画を観るような感覚になりました。

──私は現在23歳なのですが、お恥ずかしながら今回初めて黒澤監督の映画を観ました。個人的には、男女の儚い恋を直接的に描くのではなく、数分の僅かなシーンで表現しているのがとても印象的でした。

井上由一氏

やっぱり映画って娯楽なので、基本的には誰もが共感できる内容でなければなりません。全ての要素が詰まっている娯楽だっていう風に売っていく。だから宣伝⽤ポスターは、少しでも興⾏収⼊を上げて間⼝を広げるために、全⽅位に向けて宣伝浸透させるデザインにしていくということ。

以前、デザイナーの檜垣紀六さんとお話しさせていただいた際に「映画会社はデザイナーに何を求めているのか」という話をしました。そこで、映画ポスターに求められることは、1枚のポスターの中にその映画のすべての要素が入っていることだと。「恋愛」というのは、映画本編における重要な要素の 1 つだと思います。

それから、当時は各映画会社によってカラーがありました。東宝は明るく楽しい映画。松竹は人情ものとかコメディーとか。黒澤監督の映画は難しい社会派の作品もたくさんありますが、その中でも主人公級の男女がほのかな恋心を抱くとか、ホッとするような要素が配置されていることも多い。多分、映画人としての意識なのだと思います。

昭和における映画ポスターの在り方

──昭和という時代において、“映画ポスター”はどんな存在でしたか?

映画ポスターは、現代と比較すると遥かに重要なものでした。当時はSNSやインターネットではなく、ポスターやチラシのような印刷物が主流の告知物だったので、観客は映画館のポスターを見て行くかどうかを決める。しかも、当時の上映期間は⼤体2週間なので、今みたいに「ヒットしたら、2ヶ月ロングランします」ということはありませんでした。だから、上映期間にどれだけお客さんを集められるかがすごく重要なんです。宣伝のスケジュールもタイトだったので、撮影中に宣伝が始まっているということもありました。

──当時のポスターと現代のポスターに違いなどはありますか?

当時のポスターはやっぱり気合が入っていますよね。他社の作品よりも面白いということを、ポスターを通じて伝えなければならなかったので。映画館でしか映画を観ることができなかった時代のポスターというのは独特だと思います。価値や存在意義があるなと。

──映画館にポスターを置くというプロモーション以外に、どのような宣伝方法があったのですか?

当時は観客の人口が多かったので、劇場に来る方に向けて特報や予告編を流すだけでかなりのお客さんを囲うことができました。あと、テレビがほとんど機能していない時代だったので、町の銭湯や理髪店など、⽇常⽣活の場にもポスターが貼ってありました。

配信元: Dig-it

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