黒澤映画ポスターの特徴
──これまでも沢⼭の映画ポスターをご覧になってきたと思うのですが、黒澤映画ポスターの特徴や他のポスターとの違いはあったりしますか?
うーん、どうだろうな。当時、名匠と言われる監督が沢山いらっしゃる中で、ポスターを制作するデザイナーは同じ方だったりするし、映画会社の宣伝部からの要望に答える形でデザイナーさんが制作していたりもするので、劇的な違いはないと思います。ただ、少なくとも言えることは、黒澤監督はデビュー当時から早くも大作を任されていて、日本の映画界を担う新星みたいな形で世に出られたので、他の監督の作品よりもポスターの種類は多かったのではないかと思います。
また、黒澤監督の映画ポスターの中には、撮影中に制作されたものもあるのですが、このケースは珍しくて、一握りの大作や映画会社の勝負作の時にそういうポスターが作られます。あとは、出演者ではなく黒澤監督のネームバリューを使って、監督のお顔がポスターに掲載されるということも多くなりました。海外だと、アルフレッド・ヒッチコックなんかもそうですね。黒澤監督のポスターはたくさん種類があるので、集めれば集めるほどきりがないです(笑)。
──たくさん種類があると全部集めたくなりますね。
コレクションをする人って、探していたものを発見する喜びに加えて、それと同じような、または全然違うデザインのものを探す、手にいれるという楽しみがあります。現存数が少ないものに関しては皆さんが狙っているので、入手の難易度もどんどん高くなっていきます。あと、評価価値も当然高くなっていくので、必然的に敷居が高くなっていく。それでも、コレクターは頑張ってしまうのですが(笑)。
ポスターのセレクト基準
──今回のポスター本には、沢山の種類のポスターが掲載されていますが、セレクトの基準などはありましたか?『七人の侍』なんかも沢山の種類がありますよね。
まず、皆さんが知っている有名なポスターはもちろん掲載しました。それから、映画会社の宣伝部やデザイナーの方々がどれだけ頑張ったかということもお伝えしたかったので、皆さんが知らないであろう、もしくは当時の映画館のロビーにいないと見れなかったポスターも掲載しました。
──大きなポスターも掲載しているんですね。
そうですね。これは、立看と言われているポスターで、縦に2枚並べて貼るポスターです。街中の電柱や映画館の前に貼られていました。ちなみに、B0のポスターも掲載しています。

──B0?! 普通のポスターの4倍!
そうなんです(笑)。普通のポスターはB2なので、4倍ですね。当時、昭和29年ごろは紙が貴重な時代だったので、この大きさのポスターはかなり珍しいものでした。このデザインを知ってる方もあまりいらっしゃらないみたいです。ちなみに、同じ東宝作品で『七⼈の侍』と同年公開された『ゴジラ』でも同サイズのポスターを作っています。年間数本の⼤作公開時のみ、この⼤型サイズを制作してたわけです。
──ローカル版と書いてあるポスターもありますが、地方限定のポスターもあったということですか?

これは、地方版と言われているポスターです。全国津々浦々で上映するので、映画会社が作ったポスターだけでは間に合わなかったのだと思います。迫力のあるデザインのものもありますよ。
──このポスター本にはプレスシートも掲載されているというのがポイントですよね。
そうですね。プレスシートはミニポスターとも言われていて、マスコミに配る資料でもあったので、これを読んだ記者が新聞記事を書いたり、雑誌で紹介したりとか潜在的な広告物のひとつでした。本書のポスターをまず楽しんでいただいた後、プレスシートに掲載された数々の売り⽂句、キャストの方のお話とかも読んでいただきたいですね。当時の宣伝物のなかで、その映画を実際に作った監督やキャストがどのようなことを仰っているのかということも、とても重要だと思っています。
──このポスター本、どのような方々に手に取っていただきたいですか?
黒澤映画ファンの方々にはもちろん読んでいただきたいのですが、そういった方に加えて、黒澤監督の映画を観たことがない方々にも手に取っていただきたいです。当時の映画の宣伝の面白さを感じていただき、そこから実際に『七人の侍』や『用心棒』などの映画を観てみようというきっかけになったら素敵だなと思います。
──周囲の反応はどうでしたか?
すぐ読み終わるかと思ったら、読み終えるまで5時間かかったという反応がありました(笑)。ポスターデザインだけではなく、中身の貴重な資料も読んでいただける大きさにレイアウトしたので、5時間なり10時間なり、この1冊で楽しんでいただけるんじゃないかな(笑)。